内藤気象予報士
ウェザーニュース(会社名は「~ニューズ」、ネット配信番組は「~ニュース」)の内藤邦裕気象予報士がハンググライダー通学のエピソードを語っていたのは先月末(8/28のサンシャイン)でした。
筑波山から私の母校・筑波大学まで直線で20~30キロなんですよ。あるとき、午前中空を飛びに行っていて、「あっヤバい、今日午後、研究室のゼミがあった」と思って、「間に合わないなあ」とそのまま上空を飛んで、クロスカントリーフライトって言うんですけど、大学の研究室のそばにあるグラウンドに着陸して、そのままそのゼミに行ったことがあります。
頁末に切り抜き動画あり
予報士登録番号11番の内藤氏は切り抜き動画で「大学に辿り着くまで20キロありますから」とも語っています。この距離感が私の脳内地図と合致しません。
私は筑波山に登ったこともなければ、筑波大周辺に出没したこともありませんが、筑波山頂から高層気象台(観測所名は「つくば」)まで20キロに満たないことを漠然と覚えていました。→「2021年2月各地の平均気温とアメダスつくば」
筑波山頂から見ると、筑波大は高層気象台の手前です。山頂から筑波大まではせいぜい14キロの世界です。内藤氏が話を盛ったと思ったわけではありません。この謎は解かねばならぬと思いながら、10日ほど過ぎてしまいました。
ハンググライダーはパラグライダーより速い
飛行距離以外にもいくつかの疑問があります。
(1)「ゼミに間に合わない」と言うが、車のほうが速くないか?
(2)ハンググライダーとパラグライダーではどちらが速いのか?
(3)そもそも市街地を飛んでいいのか?
ハンググライダーの速度について、Wiki「ハンググライダー」のページには「巡航速度は20km/hから130km/h程度」という記述があります。それが正しいのだとしても、この記述では役に立ちません。
ハンググライダーの巡航速度は20km/hから40km/h程度で、最高速度はコンペクラスになると100km/hを越せるものもある。
忍野スカイスポーツクラブ>ハンググライダーの歴史
飛行速度はHGで時速25~80km(通常35km程度)、 パラグライダー(以下PG)で、 15~45km程度(通常20km程度)
ハンググライダーハンドブック>概要
ハンググライダーはおそらく時速20キロ以下では失速してしまうものと思われますので、体感的にはかなり速いようです。時速30~35キロだとすると、ショートカットできるハンググライダーのほうが車より早く到着できることはあり得ます。
実際には、内藤氏は離陸地点まで相乗りで出かけているはずです。車で帰るにしても1人だけ先に帰ることは難しかったものと思われます。
飛行禁止区域
内藤氏が飛んだのは35年前ということですが、現行法ではドローンと同様の飛行禁止区域が設定されています。茨城県内では自衛隊関係4施設(茨城空港を含む)と沿岸部の原子力3施設の周辺上空が飛行禁止区域です。
ハンググライダーの場合は、このほかに動画で語られている高度規制があるようです。筑波山から筑波大に飛ぶだけなら、アウトというわけではなさそうです。
日本記録クラスになると、茨城(足尾)から仙台、岡山(大佐)から滋賀までの約240キロをおよそ6時間で飛べるもののようです。
筑波山より北の足尾山から離陸
さて、今日の本題は「20キロ」の謎です。畳めば背負えるパラグライダーとは異なり、ハンググライダーは折り畳んでも長さ5mで重さ30kgということです。したがって、離陸地点は車で行ける範囲に限られます。筑波山頂から飛べるはずがありません。
筑波大のハンググライダー部が使っている離陸場は筑波山の北にある足尾山(あしお-さん)東麓の施設のようです。田中正造の足尾鉱山とは無関係です。足尾山と言っても視聴者や内田侑希キャスターには通じないだろうと、内藤氏はあえて筑波山と呼んだものと思われます。
足尾には複数の離陸場がありますので、内藤氏の離陸地点を特定することはできませんでした。標高はおおむね400mのようです。到着地点の筑波大学付近の標高は約30mです。
というわけで「20キロ」に偽りはありません。田んぼに着陸したハンググライダーを見たことがありますが、帰りはどうするんだろうと思ったことがあります。空中は別にしても、その前後を考えると1人で自由気ままに飛べるわけではないのがハンググライダーです。
トルコではパラグライダー出勤
【2022/10/05追記】パラグライダー歴12年の男性が早朝フライトを楽しみすぎたのか、8:30の始業時刻に間に合わなくなり、数十キロ離れた家具工場までパラグライダーのまま出勤したというトルコのニュースです。到着は8:42だったそうです。
(※2023/01/09 たしかFNNのニュース動画を埋め込んでいましたが、削除されたようです)
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