オウム系の世界統一通商産業と統一教会

株式会社世界統一通商産業

オウム真理教の「建設大臣」だった早川紀代秀氏は、株式会社世界統一通商産業の社長でした。この法人の閉鎖謄本がWeb上に残っています。

【外部リンク】
株式会社世界統一通商産業(このサイトのINDEXページが見つかりません)

この謄本が偽造されていないものという前提で話を進めます。本店所在地は「赤坂8-4-7」です。今は「アパートメントカーム赤坂」という名称です。不動産賃貸情報によれば、1968年2月築ということですから建て替えられていません。

世界統一通商産業が入居していた建物

法人の設立年月日は「平成7年3月15日」です。平成7年とは1995年であり、早川氏は3月17日にモスクワに渡航し、20日に地下鉄サリン事件が起きています。帰国は22日です。

この株式会社世界統一通商産業は同年4月6日に家宅捜索を受けています。さすがに外壁の色はその当時とは変わっています。早川氏の逮捕は4月20日です。

法人の目的には「土木建築工事業及び造園業」、「建設機械及び建設材料・建築資材の輸出入業務及び販売」のほかに「印鑑の製造、販売」、「ヨーガ教室の経営」、「一般貨物自動車運送業」などが羅列されていますが、化学系・薬品系は含まれていません。

早川氏は北朝鮮に渡航したのか?

代表取締役だった早川氏の住所「富士宮市人穴381番地の1」とは、オウム真理教の富士宮総本部と呼ばれていた施設になります。

村井秀夫「科学技術庁長官」刺殺現場でもある東京総本部が入居していた南青山7-5-12のマハーポーシャビルは2014年から2015年にかけて解体され、2021年のストビューでは駐車場です。

オウム真理教南青山総本部跡

さて、旧・統一教会(統一協会)とオウム真理教との関係を指摘する情報は昔からあります。その真偽となると、いささか怪しいのが実情です。

当時、上祐を始めとするオウム真理教幹部がロシア政府高官と親密な関係を結んでいたのは皆さんよくご存知だと思います。
とりわけ、早川紀代秀がロシアのみならず、北朝鮮に頻繁に出入りしていたという注目すべき事実は日本の公安当局も掴んでいました。

それにしても、オウムのフロント企業である世界統一通商産業の社長を務めていた早川紀代秀が、統一教会(世界基督教統一神霊協会)からオウム真理教に送り込まれた工作員だったという説は本当なのでしょうかね?
Posted by Thread Observer at 2009年03月21日 21:45

せと弘幸BLOG『日本よ何処へ』>地下鉄サリン事件から14年(前編)への投稿

早川氏の渡航歴はWikipedia「早川紀代秀」のページに不完全ながらまとめられていますが、北朝鮮の記載はありません。日本との国交がない北朝鮮ですから記録としては残らないものかもしれません。

日本から北朝鮮に直接入国できるはずはありませんので、陸続きの韓国か中国かロシア経由になるはずです。早川氏の韓国への渡航歴はありません。中国は1回だけで、これは上海のようです。ロシアへの渡航歴は20回程度あるようですが、渡航先は私が調べた範囲内ではモスクワです。

だとすると、モスクワからの国内線で8時間かけてウラジオストクに飛んで陸路で北朝鮮に入るルートになるものと思われます。早川氏は1990年に波野村国土利用計画法違反事件で指名手配、逃走後に出頭したところを逮捕され、その後保釈されています。海外旅行については3泊4日以内が保釈条件です。

ただ、この保釈条件はWikiによれば1992年夏に解除されているようです。早川氏のロシア渡航は1993年から活発化しています。面倒なルートで北朝鮮に入国していたのかもしれませんが、もし統一教会から送り込まれていたのなら、そっちを活かすものではないかと思われます。

名前は似ているけれど…

1990年代半ばなら、統一教会では日本人信者向けの文鮮明氏生家訪問ツアーが行なわれていました。わざわざロシア経由で入らなくても、そっちに紛れる選択肢があってもよさそうです。

また、早川氏は主として武器を求めてロシア訪問を重ねていたはずですが、当時の統一教会の関連企業には統一重工業(今のS&Tダイナミクス社)があり、機関銃やヘリコプターどころか戦車も戦闘機も製造しています。

もし早川氏が統一教会との接点を持っていたのなら、ロシア・コネクション開拓に固執する理由がわからなくなります。統一教会から送り込まれた信者はいたかもしれませんが、少なくとも早川氏についてはそうではなかった可能性が高いと私は理解しています。

オウムは統一教会に学んだはずだという心証は私も感じています。「世界統一通商産業」という名称も統一教会を想起させます。

(A)世界統一通商産業
(B)世界基督教統一神霊協会
(C)世界平和統一家庭連合

今の経済産業省は2000年まで通商産業省でした。その意味で(A)はいかにもオウムのフロント企業らしい名称です。一方、統一教会の関連団体で「世界」と「統一」が連続している団体はありません。関連団体のリストで「世界統一」の文字列を検索してもヒットしません。

麻原氏は「神の化身」「最終解脱者」であり、文鮮明氏は「再臨のメシヤ」です。オウムの出家信者とは統一教会で言う献身者です。オウムのPCが格安だったのは工賃を支払わなくてもいい出家信者が組み立てたからです。

資産または無償の労働力を強欲に求めるという根本的なベクトルは同じです。権威付けが大好きだとか、教団として1度は選挙に出たとか、拉致監禁を主張するとかの共通点は多いとはいえ、それは新興宗教にありがりな共通点であり、(A)は統一教会のネーミングセンスとは思えません。

岐部氏の建造物侵入

ところで、オウムの「防衛庁長官」だった岐部氏は世界統一通商産業が8Fに入居しているビルの地下駐車場で通報を受けて逮捕されています。

1995年4月6日午前1時ごろ、東京都港区赤坂のマンション地下駐車場に乗用車を乗り入れ、近くに立っていたところを、「駐車場に不審な3人組がいる」という通報で駆け付けた署員に建造物侵入罪で2人の信者と共に現行犯逮捕された。

Wikipedia>岐部哲也 逮捕

かなりきわどい別件逮捕です。「現行犯逮捕」とありますが、映像では夜が明けてからの逮捕です。通報の時刻が「午前1時ごろ」で、任意で車内を調べたとしてもそこまで時間がかかることはないでしょうから、何かしらのやりとりが続いたものと思われます。

8Fの賃貸借契約締結時点では「世界統一通商産業」はまだ設立されていないわけですので、契約は別名義だったはずです。深夜にオーナーや仲介業者を起こすわけにもいかず、確認に手間取ったことは予想できます。

【2023/05/28追記】当時のニュース映像では8階Bのドアには「世界統一通商産業」の下に「日本秘密ニコラテスラ協会」といういかにも怪しい名前のプレートが掲げられています。

ひょっとすると、別テナント用の区画に車を置いていたのかもしれません。ビルの大半は事務所使用でしょうから、夜の駐車場は空いているはずです。それなら辛うじて納得できる範囲です。

車からは銃身のようなもの70本、引き金のようなもの20数本が押収されているようです。岐部氏は公判で次のように述べたそうです。いたって正論です。

公訴事実に対しては「小銃の部品を隠していたことが違法というのであれば有罪を認める。しかし、世界統一通商産業が入居しているビルの駐車場を使ったことが建造物浸入にあたるというのは甚だしいこじつけである」 として無罪を主張した。

Wikipedia>岐部哲也 裁判

前科なしの建造物侵入で懲役1年の実刑判決は重いわけですが、岐部氏は控訴していません。内乱(予備)罪の適用はできないのか?と調べてみましたが、内乱罪の場合は首謀者以外に懲役はなく禁錮だけでした。

村井氏刺殺事件は4月23日です。これ以降の別件逮捕については警察側に一定の正当性があると言えなくもありませんが、4月6日の時点では相当に強引です。ただ、麻原氏逮捕に至る供述が得られたのは占有離脱物横領罪(自転車泥棒)で逮捕された林郁夫氏でした。

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