「生ニラ玉」とは? 生のいろいろ

ニラのお浸しの卵黄乗せ

まだ開店前の居酒屋メニューに「生ニラ玉」とあるのを見かけてしまい、何じゃそれは?と小一時間ほど悩んだのでした。

生ニラ玉

一般に「ニラ玉」と言えばニラ玉炒めです。炒めていないニラ玉なら、刻んだニラを盛大に散らした醤油ベースのタレに黄身を落としたものを思い浮かべます。それはそれで焼いた厚揚げや長芋とかに合いそうですし、タレ少なめで卵かけご飯になりそうです。ただ、単品の居酒屋メニューにはならないはずです。

卵焼きに後乗せで刻んだ生のニラが振りかけてあるのかとも思いましたが、最初から混ぜて焼いてくれと思うわけです。いろいろ考えるうちに、ニラが生なのではなく卵が生というだけのことではないかと思い至りました。

ほうれん草やニラのおひたしに生卵の黄身を乗せて白ごまを散らしたものはしばしば見かけます。それほど珍しいわけではなく、昔からありました。ハンバーグでもハムエッグでも、固まっていない黄身をソース代わりにするのは私の好みです。

とはいえ、黄身が乗っかっていようがいまいが、おひたしはおひたしの名前で提供されるもののはずです。煮詰まってきましたので、「生ニラ玉」で画像検索してみました。単なるおひたしでした。

「生」なのはニラではなく、卵だけのようです。それは「卵黄乗せニラのおひたし」であって、それを「生ニラ玉」と呼ぶなら、ほうれん草のおひたしに黄身を乗せたものは「生ほうれんそう玉」になります。語呂を整えれば「生ほう玉」です。

短冊山芋に黄身を乗せたものは「生山玉」、イカ刺しの卵黄乗せは「生イカ玉」です。後者は焼かない「お好み焼き」?を連想してしまいます。「生ニラ玉」が通用するのなら、温泉卵を乗せた場合は「温ニラ玉」です。

生ビール

手が加わっていないのが「生」です。「げんなま」とは生の現金であり、小切手や仮想通貨ではありません。一般的には熱処理の有無が「生」であるかどうかの基準になるはすです。

生ビール及びドラフトビール
熱による処理(パストリゼーション)をしないビールでなければ、生ビール又はドラフトビールと表示してはならない。

ビールの表示に関する公正競争規約及び施行規則第4条第2項

定食系の店でビールを頼むと「生と瓶がありますけど」と返されることがあります。樽やビールサーバーから注がれるものが「生」という認識のようです。生ビールが瓶や缶で提供されていなかった時代の名残です。

注いだり注がれたりを鬱陶しく感じる私はためらうことなく「生」を注文するわけですが、「生」と「瓶」は対立する概念ではありません。今では生の瓶ビールや缶ビールもありますし、生でない樽もあります。

ラガービールも「生」と二項対立するものではありません。加熱処理したラガーもありますが、加熱処理しない生のラガーもあります。

ラガービール
貯蔵工程で熟成させたビールでなければラガービールと表示してはならない。

ビールの表示に関する公正競争規約及び施行規則第4条第1項

日本では生ビール=ドラフトビールであり、これに対立させるなら熱処理ビールと呼ぶしかないようです。

生八ツ橋、生もみじ饅頭

熱処理の有無を問題にするビール業界とは異なり、和菓子業界の「生」は水分量が基準になります。

1 生菓子類とは、次のいずれかに該当するものとすること。
(1) 出来上がり直後において水分四○%以上を含有する菓子類。
(2) 餡、クリーム、ジャム、寒天若しくはこれに類似するものを用いた菓子類であつて、出来上がり直後において水分三○%以上含有するもの。

厚労省>標示を要する生菓子類の定義について

水分量の多いほうから、生菓子>半生菓子>干菓子に分類されるのが和菓子の世界です(洋菓子も)。やわらかい八つ橋は生菓子、カリカリの八つ橋は干菓子になります。生八ツ橋の「生」は生菓子の「生」であって、熱処理していないという意味ではありません。

もみじ饅頭は昔からあるノーマルタイプ(カステラ生地)でも生菓子です。「生もみじまんじゅう」は皮に米粉などを用いてもっちり感を出しているだけで、熱処理していないという意味ではありません。

従来品も生菓子ですので、「生」を強調したところでアウトではありません。「生」をアピールする人形焼もありますが、人形焼にしてももともとが生菓子に分類される焼き菓子です。

生チョコレート、生キャラメル

生チョコレートが出回るようになったのは1990年前後と記憶していましたが、日本では1988年が起源ということです。公正競争規約の条文は次のとおりです。クリームと水分の量が基準になるようです。

チョコレート類の表示に関する公正競争規約(25ページ)

花畑牧場で有名な生キャラメルについては、公正競争規約や厚生省令など公的機関による定義はないようです。厳密には生クリームについても定義されているわけではありません(省令の「クリーム」を習慣的に準用しているだけです)。

生キャラメルのもみじ饅頭もありますが、名古屋でみかけたのは生キャラメルの餡をチョコレートのカステラ生地で包んだ人形焼でした。

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