ポーランド国境近くの軍事施設とは

隔離措置免除

EU諸国では入国に際して7日間の隔離が原則です。域内では(1)規定回数のワクチン接種から14日経過した証明書、(2)6か月以内の罹患証明書、(3)入国前48時間以内の陰性証明のいずれかで隔離が免除されることになっています。

域外からEUに入境する場合には、(3)+(1)または(3)+(2)で隔離免除となるのが原則です。ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアのEU4か国とモルドバは、ウクライナからの陸路の避難者については書類がなくても隔離免除で受け入れています。

直近4週と累積の陽性者数は次のとおりです。ちょうど落ち着いてきたところです。スロバキアは国民の4割が感染済みです。

直近4週累積比率
ポーランド431,5585,818,6877.4%
スロバキア427,6762,278,16418.8%
ハンガリー118,3711,814,3626.5%
ルーマニア240,0202,791,9948.6%
モルドバ24,757507,5994.9%
ロシア3,312,73817,040,72119.4%
ベラルーシ116,469939,51412.4%
▲直近4週間の新規陽性者の比率(Johns Hopkins大 3/13)

避難民はポーランドだけで160万人に達しています。半数が通過するだけなのだとしても、人口3700万人で160万人はもう対処の限界ではないかと思われます。

被弾したポーランド国境の軍事基地

そのポーランド国境に近いヤボリウ(ヤーヴォリウ)の軍事施設に8発のミサイルが着弾し35名が死亡したと報道されています。侵攻前の2月初めにアメリカ軍が対戦車用の兵器を供与して、米軍兵がその使い方を教えていた軍事基地のようです。

IPSC(international peacekeeping and security centre)はヤボリウの市街地の北東10キロほどです。

IPSC

ストリートビューはありませんが、360度写真が投稿されています。誰でも入れる施設ではないはずですが、会議室に星条旗の小旗がセットされています。2016年10月の時点でウクライナとアメリカはそういう関係にあったことになります。

Google MapではIPSCのさらに北東側に「Akademichne(Гвардійське)」が表示されます。八王子市の倍の面積と報道されていました(たぶんテレ朝)ので、一体化したものであり、こちらは演習用の施設なのでしょう。

Akademichne

30発ほどのミサイルのうち迎撃できなかった8発が着弾したということです。ニュース映像からIPSCは被弾していますが、Akademichneがどうだったのかは確認できません。

▲3/15追記 Akademichneについてはサバイバルゲーム用のレクリエーション施設という報道もされていますが、時期を区切って本物を転用しているだけではないかと思われます。実践的なサバイバルゲームなのでしょう。ウクライナには徴兵制もありますので、宿泊所を備えた訓練用の施設は必要です。

メリトポリの新市長

興味深い動きがあるのが南部のメリトポリです。3月11日にロシア軍が市長を拉致し、その翌日には親ロシア派の新市長が就任しています。就任演説はロシア語だったようですが、どういう手続きを経て市長になったかはやはりウクライナ語で説明すべきだろうと思うわけです。

2014年に親ロ派のヤヌコーヴィチ大統領や主要閣僚が所在不明になったときは、議会が職務放棄としてトゥルチノフ大統領代行を立て、大統領選挙を前倒ししました。怪しげながらも正統性を確保しましたが、今回のロシア側の手法ではそうした選任手続きが欠けているはずです。

2014年の暴力的衝突を伴う政変をロシア側はクーデターと呼んでいます。プーチン大統領の強硬姿勢を読み解く鍵になるのでしょうが、2014年のウクライナ争乱は去年のミャンマーのようなシンプルな軍事クーデターではありませんでした。

ロシアによるクリミア併合は政変直後に起きたものです。ロシア軍が包囲した非公開の議会で現職首相を解任、新首相を選任したうえで、独立をめぐる住民投票を実施し、賛成が得られたとして併合しています。解任が2月27日、住民投票が3月16日、併合が翌17日という早業です。

国籍が変わるという大問題が3週間で片付くはずはありません。それでも通用すると思っているのは、国内でもいつもそういうことをやっているからなのだろうと推測するしかありません。

もともと今回の侵攻はチェチェンと同じだと言われてきました。メリトポリの手法はクリミアのパターンをなぞることになります。アメリカが焚き付けて侵攻させたのだという陰謀論は、実は私の好みですが、焚き付けられて乗っかった側にさほど同情しないのが私のスタンスでもあります。

ウクライナには手を出さないというブダペスト覚書はクリミア併合によって反故にされたというのが西側の論理、クリミアは革命であってむしろ2014年の政変(マイダン革命)はアメリカが糸を引いたクーデターだというのがロシア側の論理です。

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