タイからインドを目指して
中国本土から台湾海峡をエンジン付きのゴムボートで渡って、台湾当局に身柄を押さえられた中国人のニュースがありました。180キロを11時間ということでしたので、快調なペースです。ただし、密航ですから見つからないように渡るのはスリリングなゲームになります。
国後島から根室海峡を23時間かけて背泳で泳ぎ切ったロシア人の場合はさらにスリリングです。ロシア国境警備隊に見つかりたくはないでしょうが、空腹のサメやトドにも嗅ぎつけられたくありません。身を守るのはウェットスーツだけです。
タイのシミラン諸島沖で漂流中のゴムボートを漁民が発見し、タイ海軍が37歳のベトナム人男性を救助したというニュースがありました。
バンコック・ポスト(Bangkok Post)によると、タイ沖をゴムボートで漂流していたベトナム人男性が海軍によって救出された。男性によると、インド・ムンバイ市に住む妻に会うため、同国に向かう途中だったという。
VIETJO>タイ沖をゴムボートで漂流中の越人男性を救出、コロナ禍で生き別れたインド人妻に会うため決死の船旅(3/25)
タイ海軍は3月23日の午前11時50分ごろ、同国漁船の乗組員から、海上を漂流する男性を発見したとの通報を受けた。
漁船はタイ南部シミラン島から約14km、アンダマン海に面するパンガー県の海岸から80kmの地点で漂流する男性の姿を発見。男性が乗っていたゴムボート(全長2.5m)には、ほぼ空っぽになった水タンク1本、インスタントラーメン約10個、スーツケース1個しかなかった。
コロナで国境封鎖
報道を総合すると、次のような事情だったようです。
- 結婚したのは2年前
- ホーチミンからバンコクのスワンナプーム国際空港に到着したのが3月2日
- 乗り継ぐ予定だったが、インドのビザを取得できなかった
- バンコクからプーケットまでバスで移動した
- プーケットで手漕ぎ式のゴムボートを購入した
- インドに向けて「出港」したのが3月5日、救助が3月23日
コロナによる国境封鎖で出国できなかったのでしょうが、離れ離れになってしまったのがいつなのかは報道されていません。
ベトナムとインドは、ともに中国と国境を接しています。このため、両国の軍隊は基本的にはロシア製の武器を使っています。国連の対ロシア非難決議に賛成していないのは、そうした事情があるからでしょう。とはいえ、両国ともに輸出相手先1位はアメリカです。
印越間は別に対立関係にはありませんが、直行便は出ていないようです。バンコク経由はベトナムからインドへの一般的な渡航ルートです。
1日当たり5キロしか
救助された地点は100キロとも80キロとも報道されています。18日なら1日当たり5キロ前後です。10時間稼働と仮定すると時速2キロにしかなりません。方角が定まらずにぐるぐる回っていたか、流されたのか、諦めたかでないとこの数字にはなりません。
100キロ | 80キロ | ユーコン | 太平洋 |
100km | 80km | 160km | 17,880km |
18日 | 18日 | 5日 | 295日 |
5.6km/日 | 4.4km/日 | 32.0km/日 | 60.6km/日 |
2.3km/時 | 1.9km/時 | 13.3km/時 | 25.3km/時 |
「水曜どうでしょう」ではユーコン川の160キロを5日間で下りました。わざわざカヌーを漕がなくても舵だけとっていればよかったのでしょうが、1日当たり32キロ進んでいます。10時間稼働としても時速13キロです。実際には平均5時間も乗っていないはずですので、時速は20キロ台と思われます。
2000年に手漕ぎボートで太平洋1万8000キロ横断に挑戦したイタリア人冒険家は、21か月分の食糧を積み込み浄水装置とソーラーパネルと通信設備を備えた屋根付きボートで、ペルーのリマを出発しシドニーの手前まで漕ぎ続けました。
暴風雨のため残り120キロで救助要請しており、フィニッシュはできませんでしたが、1日当たり60キロ漕いだことになります。10時間稼働なら時速25キロです。
イタリア人冒険家と同じペースで進めれば、1か月でインドかスリランカに到着できるわけです。ゴムボートより足漕ぎスワンボートのほうが少しでも日焼けを防げるはずですが、海外では入手困難と思われます。それに、スワンボートは外洋では厳しいようです。
外部リンク
■FAUST>手漕ぎボートで太平洋横断! 1万8000㎞のゴール目前に何が!?
■モーター ワークス カンパニー>十年目の報告:ロッコツマニアのスワンの旅
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