嘉瀬川ダムの貯水率が30.9%
7月18日に25%台だった佐賀県・嘉瀬川ダムの貯水率は昨日(7/19)の雨で、7/20の午後10時時点で30.9%まで回復しています。しばらく大雨はなさそうですので、回復したのに30%そこそこでは今後が心配です。
私が心配したところでどうなるものでもありませんが、嘉瀬川ダムでは3/31から5%の取水制限が始まり、7/1からは10%の取水制限に拡大されています。この嘉瀬川ダムの数値にはちょっとトリックめいたものがあるのかもしれません。
地図のマーカーはアメダス観測所です。嘉瀬川ダムの上流には北山(ほくざん)ダムがあります。
嘉瀬川ダム | 北山ダム | |
所管官庁 | 国土交通省 | 農林水産省 |
有効貯水容量 | 50,500千m3 | 22,200千m3 |
現在の貯水量 | 15,575千m3 | 19,333千m3 |
現在の貯水率 | 31% | 89% |
目的 | 治水・発電 | 灌漑・発電 |
竣工 | 2012年 | 1956年 |
ダム湖 | 富士しゃくなげ湖 | 北山湖 |
北山ダムは農水省所管で主に灌漑目的のダムです。今朝9時時点の貯水率は89%です。Excelシートで計算すると87%ですが、佐賀土地改良区のWebサイトでは「89%」とされています。ダム湖の北山湖は「きたやま-こ」と読むようです。灌漑目的なら水量は目一杯確保したいところです。
富士しゃくなげ湖
一方、嘉瀬川ダムのダム湖は「富士しゃくなげ湖」だそうです。富士は地名(佐賀市富士町)ですが、ミドルネームが入っているダム湖の名前からして比較的最近のものだろうと推測できます。計画から40年近く経過した2012年竣工です。贈収賄事件もありました。
灌漑用の北山ダムに対して、国交省所管の嘉瀬川ダムは治水が主目的です。洪水が起きないようにコントロールするには、夏から秋にかけては満杯にはできません。大雨が来そうなときは、あらかじめ貯水量を少なくしておく必要があります。
それでも31%は少ないのでしょうが、北山ダムという砦がまだあります。数字ほどに深刻ではないと言えなくもありません。両者の中間点付近にあるのがアメダス北山(ほくざん)です。雨量のみの観測地点で標高は339mとされています。
2010年3月17日の観測開始です。標高590mのアメダス権現山から移転したようです。
アメダス北山の月降水量
2020年と2021年の観測値は次のとおりです。九州の山間部ですので、こんなものでしょう。平年値は11年分となります。
2020年 | 3128.0ミリ | 112位 | /1293地点 |
2021年 | 2730.0ミリ | 188位 | /1293地点 |
平年値 | 2576.8ミリ |
月降水量をグラフ化してみました。7月は19日までの数値です。
4月が少なかったのが影響しているようで、2020年とくらべると7月時点では半分以下です。ただ、去年との比較では大差はありません。もっとも、去年の8月は1166ミリ降っています。そもそもダムが稼働したのは2010年です。それ以前はなかったダムなのです。
佐賀地方気象台の月降水量
ついでに、佐賀気象台の月降水量も調べてみました。佐賀市の中心部は水系上は嘉瀬川水系になります。嘉瀬川から灌漑用に分水されているからです。実際には、たとえば佐賀城付近に降った雨は八田江(はったえ)から有明海に流れます。
北山とあまり変わらないようで、これまでのところ去年並みです。佐賀は2020年7月に月間降水量が初めて1000ミリを超えました。2021年8月は1220.5ミリでした。佐賀気象台の統計開始は1890年8月です。
治水用の嘉瀬川ダムができたのをあざ笑うかのような豪雨がこの2年続いているわけです。雨を期待していいのかどうか悩ましいところではあります。
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