アメダス耳納山は八女市かもしれない疑惑
7月10日の日降水量全国1位は福岡のアメダス耳納山(みのうさん)でした。実は、耳納山という山は山頂標高367.6mの比較的低い山です。耳納山山頂から西に2.8キロほどの久留米市と八女市の境界付近にアメダス耳納山が設置されています。
アメダス耳納山は雨量のみの観測所です。標高は607mということになっていますが、実際には580m台である疑いがあります。
チェーンで封鎖されている未舗装道路を奥に進んでいけば、アメダス耳納山の観測露場があるはずです。このストビューは次の地図の赤三角地点(▲)から北方向を撮影したものです。
左端の青マーカーがアメダスです。地理院地図を信じるなら、アメダス付近は590mの等高線より低いばかりか、雨量計設置箇所は久留米市ではなく八女市かもしれない疑惑さえあります。
アメダス耳納山の観測値
アメダス耳納山の過去3年間の観測値は次のとおりです。もともと雨は多い地域です。
2020年 | 3061.0ミリ | 128位 | /1293地点 |
2021年 | 2524.0ミリ | 257位 | /1293地点 |
2022年 | 1883.0ミリ | 421位 | /1285地点 |
7月10日は日降水量も1時間降水量もアメダス耳納山としては観測史上1位でした。統計開始は1976年1月ですが、TOP10で一番古いのは2009年です。
日 | 1時間 | ||
376.0 | 2023/7/10 | 91.5 | 2023/7/10 |
318.0 | 2018/7/06 | 80.0 | 2012/7/14 |
278.5 | 2020/7/06 | 75.5 | 2012/7/11 |
232.0 | 2012/7/14 | 72.5 | 2012/7/12 |
232.0 | 2012/7/13 | 72.0 | 2019/8/28 |
228.5 | 2020/7/07 | 71.5 | 2017/9/07 |
219.0 | 2021/8/12 | 67.0 | 2009/7/25 |
215.0 | 2019/8/28 | 59.0 | 2022/8/24 |
204.0 | 2021/8/13 | 58.5 | 2022/7/19 |
203.5 | 2009/7/25 | 57.5 | 2009/7/01 |
この十数年で上位を独占しているということは、短時間に集中的に降る傾向が高まっていることになります。
グライダー山?
Google Mapではアメダス耳納山から東北東1.4キロ付近に「グライダー山」があります。このページ最初の地図では赤の★印です。なぜグライダー山なのでしょう。とてもグライダーを運べるような山ではありません。
耳納山スカイラインと呼ばれる林道から「グライダー山」の山頂に通じる道は東と西に2つあります。東の石段のほうが傾斜は緩やかですが、結構なヤブです。
この藪の中では、パラグライダーなら背負えても、ハンググライダーは持ち込めません。グライダーなどとんでもないというレベルです。それに、公益社団法人日本滑空協会の活動場所34か所に福岡県はありません。
ひょっとすると、私が想像しているトレーラーで運搬するグライダーではなく、無人のラジコン飛行機のことかもしれません。1mぐらいのラジコン機なら抱えて登れそうですが、普通は車で直接行けるような河川敷などで飛ばすものです。
1940年・幻の東京五輪
さて、山頂には「グライダー日本新記録樹立之地」という石碑もあるようです。同時に、九州電力の看板も設置されています。
九州電力からのお願い
グライダー山の山頂看板
フライヤーの皆さんへ
変電所及び送電線に注意!
九電看板にはパラグライダーのイラストが添えられています。まあ、そうでしょう。ハンググライダーやグライダーは物理的に運べません。次に横たわる疑問は「日本新記録」とは何のことか、です。
考えられるのは、距離か時間か高度です。日本記録が飛んだ距離だとすると、記念碑はむしろ着陸地点に設置すべきです。滞空時間だとすれば、もっと標高の低いところに降りてさらに時間を稼ぐべきです。高度ならどこに降りようがもはや関係ありません。というわけで、私は高度ではないかと読んだのでした。
日没17時50分、深夜に至り搭乗機寒暖計で零下10度を示すなか、2月8日未明午前0時08分03秒、善導寺町古北の浜(筑後川の河畔)に地元住民協力のたき火の明かりを頼りに無事着陸。滞空時間13時間41分08秒の日本公認滑空機滞空日本新記録を達成した
Wikipedia>河辺忠夫
1940年(昭和16年)の出来事です。高度ではなく滞空時間の日本記録でした。着陸地点は筑後川河川敷の古北です。巨勢川との合流地点のやや下流になります。
どうやら幻となった同年の東京五輪にグライダーも競技種目として予定されていたということです。機体は今のグライダーより小さめでポッチャリしたもののようです。当時は町を挙げての協力体制が整っており、山頂への機体の運搬も可能だったのでしょう。
なお、冒頭の地図の緑星印(★)はハンググライダー発進基地です。ハングの場合はこれぐらい開けていないと持ち込むのが厳しいはずです。
【外部リンク】
■一般財団法人日本航空協会>航空遺産写真 今月の1枚「 前田式703型 」
■公益社団法人日本滑空協会>グライダーとは
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