統一教会から証人喚問を希望すればいいのに…

ダメ押し?の会見

明日(10/16)午後、旧・統一教会(統一協会)は松濤本部で会見を開くようです。鈴木エイト氏は、田中会長の辞任と謝罪会見があるかもという話をしていましたが、どういう会見になるのか楽しみです。

解散命令請求に対する教団のプレスリリースはすでに発表されています。福本弁護士が出てくるのなら、これまでの方針を覆すことにはならないはずですから、絶望的に孤立を深める会見になります。

一方、田中会長が謝罪するなら、誰に対して何を謝罪するのかという話になります。どうせ遠からず辞任は必至なのですから、辞任にインパクトはありません。解散請求が裁判所に送られてしまった今になって、会長が辞任したところで何の足しにもならないと思われます。

2009年の新世事件では当時の徳野会長が辞任しましたが、3年半後には会長に復帰しています。田中会長はたしかに初期対応を失敗しましたが、指示された範囲内で対処しただけのことだと思われます。リーダーシップを発揮できなかった責任があるとしても、もともとそれほどの権限はないはずです。

毎日新聞の世論調査(10/14・15)では、解散命令請求について「評価する」83%に対して「評価しない」6%でした。

満塁ホームランでも追いつかない大差ですが、この状況で打開策を探るなら、
(1)団体名義で起こしたスラップ訴訟をすべて取り下げる
(2)田中会長、方大陸会長、梶栗UPF議長、堀女性連合会長、777双の古田元男氏、「二世の会」から1人の計6人が、国会の証人喚問招致を自ら申し出る
(3)田中会長と同じ6000双及びそれ以前は総退陣
ぐらいのことは必要です。

一方的に自分たちの見解を語るだけの会見はもう必要ありませんので、宣誓のうえで質問に答えて頂きたいと考えています。冒頭に10分ほどの時間を与えるのはやぶさかではありません。梶栗氏と堀氏を入れたのは(1)の絡みがあるからです。

古田元男氏にはぜひ出てほしいところですが、細田氏の会見のようになってしまうのは気の毒です。古田氏の健康状態次第では12双か777双から1人名乗り出てほしいと思っています。777双の尾脇氏や柴沼氏あたりはTVインタビューに応じていましたので、言いたいことはあるはずです。

梶栗氏や堀氏も二世ですが、前向きなやり取りができるように20代の「二世の会」からも1人出席を希望します。

インパクトなら証人喚問

私はもともと質問権の行使ではなく、国会が国政調査権を発動すべきだというスタンスです。10万円の過料で済むなら、不都合な質問には答えないのがむしろ自然です。

すでに司法の領域に入っていますので、何か仕掛けたところで、裁判に与える影響は限られています。とはいえ、解散命令後を考えると、何もせずに指を咥えて眺めることもできないはずです。自主的に宗教法人格を返上するのは、裁判が控訴審に入ってからの選択肢です。

国会は招致を求めていません。手を突っ込めないのは、やはり信教の自由との兼ね合いがあるからだろうと思われます。そこで、自ら進んで「冒頭10分だけ解散請求について思いの丈を述べさせてくれたら、証人喚問に応じる用意がある」と発信すればいいのです。

社会的問題になっている当事者が偽証罪のリスクを背負って名乗りを上げたのに、国会がスルーすれば何か後ろめたいことがあるからだと思われかねません。

証人喚問の日程が入ったら解散権が制約されると岸田氏は考えるはずです。「日本の憲政史に残る汚点」を残した岸田氏に対する嫌がらせとしても、今の時期は悪くない選択だろうと愚考するものです。このまま非公開裁判の結果待ちというのはちょっと退屈です。

「別団体」の梶栗氏や堀氏が出て来ると建付けが崩れてしまいますが、そこを壊すぐらいでないと「反転攻勢」は見込めません。必要のない裁判を先に起こしたことが足かせになって、軌道修正することができなくなっているのではと思われます。

一般企業ならここまで追い詰められることはありません。宗教団体ですから否定しなければならない過去に気づいても、姿勢を転換するのは難しいことなのでしょうが、このままなら孤立することになります。教団は「信者の声も聞いてほしい」と言っているわけです。

少数派の反対意見

ごく少数の反対意見は貴重です。あえて空気を読まない解散反対(慎重)派は日本基督教団・豊岡教会の牧師さんです。原理=統一協会を知らない世代ではありません。1980年代に大学時代を過ごしている年齢です。

合同結婚式への参加を阻止しようと奮闘していたころ、政府は力を貸してくれなかった。いま解散命令請求ができるなら、なぜ過去にはしなかったのか。政治が懇意にしていたからではないのか。

朝日新聞デジタル>「ちょっとヤバないか?」 旧統一教会の解散請求、ある宗教者の懸念 2023年10月14日

これは悩ましいところで、今の家庭連合は昔ほど悪質ではないように思われます。この数年だけなら、解散命令請求に相当するとは言い難いかもしれません。「切り捨ててもいい過去」が裁かれようとしているのではないかという印象は少なからずあります。

問題は被害者感情との兼ね合わせです。被害者が「切り捨ててもいい過去」にできるかどうかは、加害者側の態度によるところが大きいと思われます。私は反対しない側に乗っかります。

さて、最近ではすっかり影を潜めてしまったのが「テロを正当化することになる」という議論です。被告の裁判はこれから始まります。彼が安部氏銃撃の先に教団解散を目論んでいたのだと勝手に決めつけてしまうには早すぎます。彼自身の裁判を見守ればいいことです。

「他団体はどうなのか」は論点ずらしにしかなりません。青切符を切られて「隣の車も…」とボヤいているようなものです。同等以上にあくどい団体がほかにあるなら、それはそれで俎上に乗せればいいことです。いたずらに長引かせることは被害者救済を遅らせてしまうだけです。今できることを優先するのは悪い選択ではありません。

「(教団幹部の)有罪がない」はそのとおりです。1972年に外為法違反に問われた曹又億萬(大山高誉)氏が国外逃亡して、共犯の教団職員3人が無罪になった事例はあります。

11月22日 – 教団関連企業、「世界のしあわせ」(後のハッピーワールド)」の営業部長でキャラバン隊のボス的存在であった曹又億萬(ソウマタオクマン、日本名は大山高誉、43双 2005年 8月 12日死去)に1971年8月27日から1972年5月27日にかけて、教団の幹部3名と共謀し、小切手2億3千万円を韓国へ不法に持ち出した外為法違反容疑で逮捕状が出る。海外逃亡したため国際指名手配となる。兵庫県警は総額で6億9,414万円を捜査の対象にしていた。

Wikipedia>世界基督教統一神霊協会の年表 1972年

「こんな古い例しかないのか」とも言えますし、「こんな時代からやっているのか」との見方もできるわけです。当時の所轄官庁は東京都であり、美濃部知事の時代です。

第2代会長の神山氏は文鮮明氏とともに脱税で収監されていますが、これはアメリカの話です。1983年の世界日報占拠事件は、傷害、暴行、監禁、業務妨害、器物損壊、住居侵入などに問われても仕方がないように思われますが、刑事事件になったのかどうかわかりません。翌1984年の副島氏襲撃事件は犯人が検挙されていません。80年代は鈴木俊一知事の時代です。

【2023/10/24追記】いわゆるフレイザー委員会の委員長宅は1978年に放火され、1984年には同委員会の主席調査スタッフだったボッチャー氏がニューヨークのビル屋上から転落死しているそうです。疑おうと思えば疑えますが、いずれにしても昔の海外での出来事です。

当面の争点:刑法限定→民法含む

教団が政治家とつながることによって、警察の捜査が歪められたり警察側が忖度したりしたのではないかというのが、今回の一連の問題の焦点の1つです。今までいろいろあったのに、教団が事件を起こしたわけでもない今になって解散なのかという牧師さんの思いは理解できます。

過料裁判で早速争点になっているのが、宗教法人法第81条第1項第1号の「法令に違反」です。これが裁判上では最初の山岳ポイントになります。

第八十一条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。

e-GOV法令検索>宗教法人法

オウム裁判で東京高裁は刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するもの」との司法判断を下しています。

政府は昨年10月18日まで「刑事事件を起こした場合」との見解を示していました。これを一夜にして「民法の不法行為も入りうる」と翻したのが翌10月19日です。

高裁は「刑法としており、含みを持たせています。18日までの政府答弁は信教の自由への配慮から、抑制的に「刑事事件を起こした場合」としていたものと思われます。

素直に読めば、「法令に違反」を刑法限定と解するのはむしろ不自然です。うしろの条文がありますから軽犯罪法は含まれないとしても、外為法や所得税法違反はその程度によっては含まれるはずです。民法も同様です。逆に、刑法であっても車庫で雨宿りした住居侵入レベルは含まれないでしょう。

ここで話を戻します。もし、教団と政治家の関係が警察を及び腰にさせていたために有罪が1人もいないのだとすれば、刑法に絞るのは適当ではないはずです。

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