門前とは

総領事館の9/20付「注意喚起」には88か所のレノンウォールが掲載されていますが、18番目の「兆康巫成鋒議員事務所門前」がなんとも悩ましいところです。「兆康(ちょうこう)」は屯門の地名であり、選挙区名でもあります。

兆康
兆康(Google Earthプロ)

「巫成鋒議員」とは民主建港協進連盟(民建連)所属の前・区議会議員です。先日の区議選では得票数を260票ほど増やしながら、得票率は10ポイント減らして落選しています。

【2015】
巫成鋒 2677票(53.3%)
陳樹英 2267票(45.1%)
羅皓恩  80票(1.6%)
【2019】
陳樹英 3784票(56.2%)
巫成鋒 2939票(43.8%)

民建連は労組がバックについた建制派(親中派)であり、定数70議席の立法会では12議席を抱える第1党です。民主派なら納得できますが、親中派議員事務所の前にレノンの壁があるというのはかなり挑発的な話です。

巫成鋒・前区議会議員の事務所は兆康駅前にある(あった?)ものと思われます。埋め込んだのは兆康駅構内から2018年9月に撮影されたストビューです。事務所が入居しているのは正面のビルのようです。

プラハにある本家・レノンの壁は教会の壁でした。香港のレノンの壁は歩道橋や高架の柱などの公共施設が多いようです。在香港日本国総領事館が示したリストは、もともと建制派が付箋を剥がす目的でつくったものです。

3万人の香港警察

香港警察の警官数は2018年4月30日現在で29,268人、ボランティアの補助警察が3,060人だそうです。この中には114隻の警察船を持つ海上警察も含まれています。警察は「24時間営業」です。単純に3分の1なら1勤務の出面は1.1万人となります。

6月9日の100万人デモの翌日、林鄭月娥行政長官は逃亡犯条例の改正案を取り下げる考えはないことを言明し、11日には立法会の梁君彦議長が20日の採決を示唆しています。

条例案の審議は12日午前11時に再開される予定でした。このため、デモ側は11日夜から立法会を包囲し、12日はストや授業ボイコットを呼びかけています。警察は12日、立法会周辺に5000人を配備しています。

この5000人という数値は各種報道で一致していますので、おそらく警察当局からリリースされた数値だと思われます。1勤務の出面1.1万人で、5000人を捻出できるものなのでしょうか。日常業務は通常の半数で対応することになります。

まあ、この日だけならできなくはないのかもしれませんが、6/12の時点ですでに「応援」が入っていたのではないかと考えるのはそれほど不自然なことではないと思われます。日本の機動隊に相当する香港の部隊は約2000名ということです。

6/12立法会包囲
立法会を包囲(Google Earthプロ)

時事通信の記事にあった地図をトレースしてみました。数万人で立法会を包囲し警察と対峙した結果、この日の改正案審議は延期され、午後3時から警察が催涙弾やビーンバック弾や放水銃を用いた強制排除に乗り出しています。逮捕者は11名ですが、負傷者が81名ということです。

この日の衝突を香港警察も行政長官も「暴動」と呼び、のちにその撤回が五大要求の2番目に掲げられることになります。6/9のデモ後の衝突では催涙スプレーが使われていますが、今年の一連の抗議活動で催涙弾が使われたのは6/12が最初です。

【外部リンク】
時事>香港でデモ隊と警官隊衝突=催涙弾も、70人超負傷-逃亡犯条例の改正、混乱拡大(6/13)

6/9の香港100万人デモ

香港における一連の抗議活動は、6月9日(日)のいわゆる100万人デモから始まっています。もちろん、いきなり100万人も集まるはずもなく前史はあるわけですが、この日は一種の「記念日」になっているようです。明日でちょうど半年です。

主催者発表が103万人、警察発表が24万人です。どこの国でもこの程度の開きはあるもののようですが、香港では返還後最大規模であることには変わりはないようです。まあ、主催者も警察も正確な数値を把握することはできないはずです。

6/7付「日経」には、デモ主催者の民陣(民間人権陣線)が30万人規模の参加を見込んでいるとの記述があります。6/10付「香港BS」にも、警察は当初予定していた3車線の歩行者天国を6車線に拡大したとの記載があります。

6/9の100万人デモ
6/9の100万人デモ(Google Earthプロ)

おそらくデモ申請の段階では30万人だったのでしょう。見込みより参加者が膨れ上がったのだとすると、その実数の把握は一層困難になるはずです。午後3時開始予定が30分繰り上げ、デモの最後尾が出発したのは午後6時半と伝えられています。

香港当局によれば6/9のデモはビクトリアパーク→添馬公園だけでなく、全土で行われたようです。だとすると、主催者側の数値はこれを含んでいるのかもしれません。また、デモが長時間に渡るなら、その一部だけ参加した人もいたはずです。

垂直都市の香港では各所に歩道橋(正確にはペデストリアンデッキ)があります。歩道橋上でプラカードを掲げている人をカウントすべきなのかという問題もありそうです。一方、警察発表の24万人とはピーク時の数値だそうです。

結局、数値のズレは必ずしも思惑だけに引きずられた「誇大表示」なり「過少申告」なりと決めつけるわけにはいかないものかもしれません。カウントのしようがないのが実情だと思われます。

数値の比率が4対1なら、主催者発表の半分と警察発表の2倍はほぼ一致します。それが真実に近いのかもしれません。香港の人口は約750万人です。6/9の100万人デモの参加者が50万人だったとしても、東京に換算すれば90万人以上です。

デモ隊と警察の衝突は6/9から始まっています。主としてデモ終了後の6月10日未明のことと思われます。3~5月のデモでは衝突したという報道を確認することはできませんでした。この日の逮捕者は19名ということです。

6月12日には立法会で逃亡犯条例の審議が再開される予定でした。6/9という設定はこれを睨んだものであり、デモ終着点の添馬公園は立法会の建物の前で、隣が行政庁です。今日(12月8日)は国際人権デーのデモが行われ、主催の民陣は80万人と発表したそうです。

11月後半の香港デモ

在香港日本国総領事館の注意喚起に戻ります。11月19日付では香港理工大、尖沙咀、中環をMAPに反映しました。

1 16,17日に始まった紅磡の香港理工大学キャンパス一帯に於ける抗議者と警察の激しい対峙・衝突は,18日午後も収束せず,抗議者数百名がキャンパス内に立て籠もる一方,警察は包囲を続けています。両者は火炎瓶や放火,催涙弾等で応酬を続けており,また現場では多くの逮捕者や負傷者が発生している模様です。
2 併せ,17日晩や18日,尖沙咀や中環等では抗議者と警察の対峙が発生し,尖沙咀では催涙弾が発射されました。

1119 香港における抗議活動に関する注意喚起(その56)(令和元年11月18日分)

11月20日付では理工大のみです。「九龍地区」はさすがに漠然としすぎています。

香港理工大学には依然として抗議者が残留を続けており,昨日18日(月)夜には大学の周辺でこれらの抗議者を救出しようとする市民による抗議活動が発生しました。今後も抗議者と警察の間で衝突が発生する可能性もありますので,理工大学周辺地域には可能な限り近づかないようにしてください。
 本日19日(火)には,理工大学以外の九龍地区でも抗議活動が発生している模様です。九龍地区に滞在中の方は十分注意してください。

1120 香港における抗議活動に関する注意喚起(その57)(令和元年11月19日分)

11月22日付は例の専用ページを見てねパターンです。その中に「ラ・サール小学校」があるのが気になります。埋め込んだのは2011年9月撮影のストビューです。漢字では「喇沙」と書くようです。

近くにはカレッジもあります。ラ・サール会の本部はフランスではなくローマに置かれ、80か国1000校以上の学校を運営しているとのことです。小学校をデモの終着点にしているのは「子供に対する化学兵器の使用停止を求める行進」だからです。

11月25日付では協和街休憩公園、通利琴行、茘枝角公園、通利琴行、愛丁堡広場、在香港英国総領事館、遮打花園をマッピングしました。

11月25日11時現在で、報道等で判明している香港における主な抗議活動等は,以下のとおりです。
○11月25日(月)20:30~ 観塘(協和街休憩公園) 上映会
○11月26日(火)19:30~ 尖沙咀(通利琴行) 演奏会
○11月26日(火)20:00~ 茘枝角(茘枝角公園露天劇場) 音楽会
○11月28日(木)19:00~ 中環(愛丁堡広場) 香港人権民主法案感謝集会
○11月29日(金)19:30~ 金鐘(在香港英国総領事館) 元英国総領事館員応援集会
○11月30日(土)14:00~ 中環(遮打花園) 中学生・中年集会

1125 香港における今後の主な抗議活動や関連情報

11月29日付からは、在香港英国総領事館、遮打花園、九龍湾駅をマッピングしました。

11月29日(金)19:30~ 金鐘(在香港英国総領事館) 元英国総領事館員応援集会
11月30日(土)14:00~ 中環(遮打花園) 中学生・中年集会
11月30日(土)20:30~ 九龍湾  理工大学学生支援人間の鎖デモ

1129 香港における今後の主な抗議活動や関連情報

香港区議会議員選挙の特別枠

私は選挙前に世論調査の電話を受けたことが過去3回あります。知事選で1回だけ付き合いましたが、誰に投票するか問われて当選ラインには届きそうにない候補者を答えました。意中の候補でもなく、実際の投票行動とも異なります。

香港在住で政府系メディアから電話や訪問対面の事前調査をされたら、民主派に投票するとは絶対に答えない自信があります。自殺行為になりかねません。警察が前に出すぎるとそういうことになってしまいます。

先日の香港区議会議員選挙におけるいわゆる民主派の当選者数について、382~390議席の範囲でさまざまな数字が出回っています。中間派をどうカウントするかの問題なのかもしれません。得票率は民主派56.7%に対して建制派(親中派)41.7%だったそうです。

Wikipedia中国語版で各選挙区の議員の色分けがなされていました。18選挙区の数字を足し算したところ、民主派388議席、建制派86議席、中間派5議席となります。黄大仙区では全25選挙区で民主派が議席を独占、大埔区でも19議席独占です。

▼選挙区、定数(直接選挙による議員数、郷事委員会主席枠)、民主派・建制派・中間派別議席数

【香港島】
中西区 15(15、0) 民主派14、建制派1
湾仔区 13(13、0) 民主派9、建制派4
東区 35(35、0) 民主派32、建制派3
南区 17(17、0) 民主派15、建制派2
【九龍】
油尖旺区 20(20、0) 民主派17、建制派3
深水埗区 25(25、0) 民主派23、建制派2
九龍城区 25(25、0)  民主派15、建制派10
黄大仙区 25(25、0)  民主派25、建制派0
観塘区 40(40,0) 民主派28、建制派12
【新界】
離島区 18(10、8 ) 民主派7、建制派11
葵青区 32(31、1)  民主派27、建制派5
荃湾区 21(19、2) 民主派16、建制派4、中間派1
屯門区 32(31、1)  民主派28、建制派4
元朗区 45(39、6) 民主派32、建制派12、中間派1
北区 22(18、4) 民主派15、建制派7
大埔区 21(19、2) 民主派19、建制派2
沙田区 42(41、1) 民主派40、建制派2
西貢区 31(29、2 ) 民主派26、建制派2、中間派3

99年間の期限で1898年にイギリスに租借された新界地区には郷事委員会なるものがあるようです。1898年の中国は清朝時代です。いきなり国家間の都合でイギリス領にされては、昔から現地に住んでいる人にとっては迷惑な話です。

原居民に対して従来の権利を認めることで抵抗の少ない統治が可能になります。このため、清が滅び中華民国から中華人民共和国になっても新界では清朝時代の決まりごとが慣習法として生きていたということです。

郷事委員会はその名残ですが、各郷事委員会の主席は自動的に区議会議員となります。主席を選ぶ選挙は区議選とは別に行われるものと思われます。この郷事委員会枠の27名はすべて建制派でカウントされています。

今回の選挙は小選挙区で452議席を争い、民主派が388議席、建制派は65議席、中間派5議席でした。民主派の議席占有率は85.9%です。27議席の郷事委員会枠を足し算すると総議席数は479議席で、民主派の占有率は81.0%です。

さて、Newsweekの記事によれば(頁末外部リンクの3段落目)、世論調査は行われていたようです。ただ、その結果を探し出すことができません。また、中国メディアでは新華社はこの結末を掴んでいたようです。

目下のところ、私の関心事は中国当局がなぜ選挙を中止にしなかったのかということですが、駐香港連絡弁公室や香港政府が北京政府に適切な情報を上げていないのだろうという説には同意できます。

【外部リンク】
Newsweek>香港区議選:中国共産党は親中派の勝利を確信していた(今はパニック)
ハフポスト>民主派圧勝の香港区議会選挙、勝者と敗者の声明に明暗くっきり。中国共産党系メディアは「不公平な状況」と牽制