関西空港とウガンダと空港検疫

アメダス関空島

関西国際空港は海上空港です。埋立地の関空島には市町境があり、対岸2市1町にほぼ3等分されています。ターミナルビルと駅は泉佐野市と田尻町にまたがっており、北ウイングが泉佐野市、南ウイングが田尻町です。田尻町が全国屈指の財政力指数を誇るのは総面積の約3分の2が関空だからです。

2市1町にまたがる関空島
関空島(地理院タイルを加工)

アメダス関空島(関西航空地方気象台)の所在地は「田尻町泉州空港中」とされています。アメダス豊中(伊丹空港)のケースもありますから、これはオフィスの所在地になるはずです。ただ、気温計と雨量計の設置箇所はA滑走路の中央付近と思われますので田尻町の町域になります。

アメダス関空島

風速計の高さは10mですから、航空局庁舎の屋上に設置されているわけではありません。風速計は2つの滑走路の両端付近にあるようですが、どれがアメダスのものかわかりません。アメダス関空島の2020年観測値は次のとおりです。

年降水量1254.5ミリ1012位/1293地点
年平均気温17.4℃96位/922地点
年最高気温35.4℃518位/922地点
年最低気温0.9℃55位/922地点
年較差34.5℃862位/922地点
年平均風速4.9m/s41位/921地点
▲アメダス関空島の2020年観測値

アメダス観測地点としては2003年観測開始です。37℃台はまだ出ていませんが、2018年2月12日を最後に氷点下は観測していません。夏は極端に暑くならず、冬は温暖でということで、2020年の年較差は小さいほうから全国60位です。

ウガンダの感染状況

6月19日に成田空港に到着した総勢9名のウガンダ五輪選手団は、空港検疫でコーチ1人のコロナ陽性が判明し、残りの8人が事前合宿地の泉佐野に移動しました。滞在先のホテルでさらに1名の陽性者が出ています。

ウガンダ選手団はもともと関空に降りるつもりだったのだろうと思われます。コロナの影響で、関空発着のアフリカ・中近東便はドバイ便だけになっています。今回の選手団は乗り換え1回で済むドーハ発のカタール航空で来日しています。今後もアフリカ諸国は中東経由で入国するはずですが、中東諸国は致死率は低いもののおおむね感染率が高い傾向にあります。

ウガンダは赤道直下のアフリカの国です。

ウガンダ

間の悪いことに感染状況が悪化している時期です。

ウガンダの新規感染者の推移
ウガンダの新規感染者の推移(Johns Hopkins大 6/25)

今回の件で明らかになったことは、空港検疫で陽性者が出てもそれに伴う濃厚接触者を判断することなく、行き先の保健所任せになっていたということです。世界と日本の感染者数のグラフが相似形になるのはそういうからくりがあったわけです。システムとしての「ザル」具合が妙に納得できてしまいます。

空港検疫による陽性者数

空港検疫で見つかる陽性者は毎月200~300名です。

空港検疫による陽性者数

2009年新型インフルのとき(舛添厚労大臣時代)のガイドラインでは、濃厚接触者に停留措置を講じるとの記述があります。

2)濃厚接触者への対応
○ 濃厚接触者については、法第16条の規定に基づく停留措置を行う。なお、搬送の準備等に時間を要する場合は、準備が整うまでの間、空港・港湾施設内又は船舶内等、適切な場所にて待機させる。患者が隔離された場合には、停留施設等において期間内の停留を行う。

厚労省>検疫に関するガイドライン(31ページ)

このガイドラインが今も生きているのかどうかについては確認できませんでしたが、よく読むと主語がありません。誰が濃厚接触者を停留させるのか明記されていないのです。濃厚接触者とジャッジされていない以上、停留させる理由もないという理屈になるのでしょう。

空港検疫で隔離された50歳代のコーチは本来の目的地である泉佐野には向かっていないわけですから、泉佐野市側の大阪府の保健所がスワヒリ語しか話せないかもしれないこの陽性者とコンタクトをとり、誰が濃厚接触者に当たるか聞き取り調査をしろというのはあまり現実的ではありません。

今回は五輪選手だったことからニュースになったわけですが、これまでずっとそうだったということです。すり抜けるのは当然のことです。検疫側もマンパワーが不足しているに違いありませんが、検疫サイドで濃厚接触者をジャッジするのが防疫体制としては妥当です。

1月以降の選手・関係者の入国は3000人近くに達し、陽性者は今回の2人を加えて6名ということです。500人に1人の割合が維持されるなら、7万人で140人になります。対応できないだろうとしか思えません。開幕前にバブルが破綻しても不思議ではないと私は思っています。

テニスの全豪オープンでは有無を言わさず同乗者全員が隔離対象となりました。それはそれで批判もありましたが、オーストラリア政府の対コロナの姿勢はそれが日常です。陽性者1人でもその日のうちに交通機関がストップするため、その覚悟がないと遠出はできない国です。

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