フィクションであっても歴史は歴史
「事実であろうがフィクションであろうが歴史は歴史だ」を検索しても、まったくヒットしません。電子情報ではなく活字で読んだのは記憶しています。誰が語った言葉だったのかはまったく覚えていません(怪しいのは大韓航空機爆破事件です)。
ロシア国営放送の番組スタジオに「NO WAR」のメッセージを掲げた女性が乱入した事件は、最初から不自然さが漂っていました。有働アナが指摘したように、キャスターが背後の乱入に微動だにせず、カメラはそのままの5秒間は長すぎます。現地時間14日夜9時(日本時間15日午前3時)の出来事です。
即日「フェイク」を疑っていたのは関テレの動画でした。
ただ、そう言われても、このハプニングは西側にとって歓迎すべきことなのです。だからこそ、西側メディアはこぞって食いついたわけです。仕込みだったのだとしても、ガス抜きは理由として少し弱い気がします。この時点では4:6の印象でした。
遺書とも受け取れる投稿をSNSに残していた彼女は連行され、翌晩に釈放されます。一晩で裁判が終わってしまうというのも驚きですが、デモを呼びかけるSNS投稿に対しての罰金3万ルーブルはさすがに拍子抜けです。
長時間の聴取を受けて釈放されたばかりにしては、滑らかな口ぶりで報道陣に対応しています。TV乱入事件がまだ裁かれていないのなら、大人しくしていればいいのに、威勢のいい発言を繰り返しています。早すぎる釈放と軽すぎる罰金に、私はフェイク説に傾きましたがまだ5:5です。
8分のディレイ説
8分遅れが事実なら、ヤラセ確定です。放映したのは、それがハプニングではなかったからなのでしょう。とはいえ、8分のディレイを裏付けるものは何もありません。ただ、もし8分遅れだとしても別に意外ではなく、そんなものだろうと納得してしまいます。
さて、マクロン大統領からの保護の申し出を断った時点で、私は6:4でフェイク説に傾きました。無事で済むとは思えないからです。フェイクだとすれば何を狙ったのでしょうか。私の想像力ではこんなところです。
(1)ロシアにもこの程度の表現の自由はあるのだということを西側にアピールしたい
(2)今ウクライナで起きていることから目をそらす
(3)「ジャンヌダルクの後に続け」組のあぶり出し
確実に(2)の罠に嵌っているもどかしさを感じますが、こんな記事もあります。
ロシア国営放送「チャンネル1」(Channel One)の欧州特派員だったザナ・アガラコワ氏が最近辞任し、ライバル会社「NTV」で30年間働いたワディム・グラスケル氏と、2006年に番組進行役を務めたリリア・ギルデイェワ氏も同日会社を辞めたと、英国BBCが16日(現地時間)付で報じた。彼らの辞任は、「チャンネル1」編集者のマリーナ・オフシャンニコワ氏が自社の生放送中にニュースルームに立ち入り反戦デモを行ってからわずか数時間でなされたという。
ハンギョレ>「戦争を称賛できない」…ロシアの国営放送のジャーナリスト、相次いで辞職(3/18)
ビデオメッセージ
3万ルーブルの罰金に問われた彼女のメッセージには、「クレムリンのプロパガンダを務めてきたことを恥じている。テレビを通じて嘘を伝えることを許してきた自分を恥じている。ロシアの国民が騙されるのを許してきた自分を恥じている」というくだりがあります。見事に内角をえぐっています。
西側目線ですが、葛藤を抱える良心的なロシアのジャーナリストが辞職というアクションを起こしても不思議ではありません。放送局内の「不穏分子」を排除する思惑が込められていたのだとすれば、私はかなり納得できます。
彼らがもし何か事を起こすようなら、拘束すればいいだけです。自発的に辞めてくれるなら、それも悪いことではありません。放送局を辞めてフリーで発言力を行使できる自由度がロシアにあるとは思えません。どうせロシアにいる限り国内法が適用されます。
【3月18日 AFP】ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)は17日、ウクライナへの侵攻によって国内の裏切り者が明らかになるだろうと主張し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領によるロシア社会の「浄化」の呼び掛けを繰り返した。
AFP>ウクライナ侵攻で裏切り者露呈 社会を「浄化」 ロシア大統領府(3/18)
ドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)大統領報道官は「このような状況では、大勢の人が裏切り者としての正体を現す」「裏切り者は自らロシア社会から消える。職を辞する者もいれば、国を去る者もいる。このようにして浄化が行われている」と述べた。
というわけで、今のところ私はこの件を7:3でフェイクだと捉えています。ちなみに、チャンネル1の公式サイトは昨日(3/20)昼間までアクセスできましたが、昨夜から403エラーになって接続できません。そのうえGoogle Mapでは「臨時休業」になっています。
フェイクの応酬?
一方で、マウリポリの劇場の空爆もフェイクの可能性があるようです。マウリポリの劇場(アゾフ文化センター?)が空爆されたという第1報は、私の知る限りウクライナのクレバ外相のツイッターです。この劇場は、つい先日まで避難所として映像が報道されていました。
【3月19日 AFP】ウクライナ南部マリウポリ(Mariupol)で、多数の市民が避難していた劇場がロシア軍の空爆を受けたとされる問題で、同市当局は18日、1人が重傷を負ったが、死者は出なかったと発表した。
AFP>劇場空爆、1人重傷も死者なし マリウポリ当局発表
市議会はメッセージアプリのテレグラム(Telegram)で、「初期情報によると、死者はいないが、1人が重傷を負ったとの情報がある」と説明。劇場が16日に空爆を受けて以降、死傷者数が発表されるのは初めて。
初期情報ですので、「確認された死亡者はいない」という意味かもしれません。この劇場に関しては、広場に書かれた「ДЕТИ(子供たち)」の文字を私はわざとらしく感じていました(上空から読み取れるでしょうが、地上軍には見えません)。
ロシア側はこの劇場を空爆したのはウクライナ軍のアゾフ大隊だと主張しています。もしそうだとすれば、ウクライナ側は焦土作戦に出たという見方もできます。施設を破壊し無価値なものにして退却するのは戦争では普通の行為です。
▲【3/26追記】市当局が死亡者数を約300人と発表したようですので、避難させてからウクライナ側が自ら爆撃した可能性はきわめて薄くなりました。私はロシア側の発表は9割引、ウクライナ側の発表は5割引で聞くというスタンスです。
原発のときが典型ですが、ウクライナ当局者の発信はずいぶん煽っているという印象があります。侵攻された当事国としては当然のことですので、そこは割り引いて冷静に受け止める必要があるはずです。
2022/06/02追記
関テレの続報です。
父親がウクライナ人の彼女はベルリンの新聞社で記者として活動中ということです。1男1女と他局のTVディレクターである配偶者はまだロシアです。こうなってくると、逆に「8分遅れ」の信憑性が問われることになります。ファイナル・アンサーはまだ早いかもしれませんけど…。
2022/10/05追記
2か月の自宅軟禁になったのが8月でした
軟禁は10月9日が期限でしたが、娘を連れて「行方不明」となり、指名手配されたと報じられています。
(1)あくまでもロシアで純粋に反戦を訴えたかった
(2)本人は純粋だったが、公安当局はガス抜きに利用した
(3)最初からそういう役割を演じていた
どうやら(2)の可能性が高いものと思われます。行方不明のままなら、真相は藪の中ですが…。
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