ウクライナ・ブチャの教会はなぜ無傷なのか?

惨劇のブチャ

人口1万人の町が世界的に有名になったのは4月4日です。ゼレンスキー大統領は西側報道陣を引き連れて民間人の遺体がそこかしこに放置された悲劇的な町を訪れました。

ウクライナ軍はイルピン川の橋を落としてキーウ侵攻を防いだため、キーウから見て川向こうのブチャには1か月近くロシア軍がとどまっていました。地図の白線から右がキーウです。

教会の敷地には多くの遺体が埋葬されているというニュースも続きました。破壊された街並みからすると、教会だけが砲撃を受けることなく残っていることが異様に思えます。破壊の限りを尽くしたかのような街並みとあまりに対照的です。

■AFP>ブチャの集団埋葬地で遺体収容 ロシア軍の戦争犯罪追及へ

背後の集合住宅もほとんど砲撃の跡を確認できません。ほかの地域では教会も攻撃しています。手当たり次第の無差別攻撃というわけではないのでしょうか。

ウクライナの宗教事情

キリスト教は11世紀に東西に分裂し、16世紀の宗教改革で西方教会がカトリックとプロテスタントに分かれています。

ウクライナにおけるキリスト教会は極めて複雑です。大きく分けるとウクライナ正教会とカトリック教会に分かれます。キリスト教会は,11世紀にローマを中心とするカトリック教会とコンスタンチノープルを中心とする正教会に分かれましたが、ウクライナにおいてはその両方の教会が存在しています。正教会についても一つではなく、大きく分けるとモスクワ聖庁の権威を認めるウクライナ正教会と,キエフ聖庁の権威を認めるウクライナ正教会に加え、ウクライナ独自の正教会(ウクライナ自治独立正教会)が存在しています。

在ウクライナ日本国大使館>エピソード集 宗教編

ウクライナのカトリックは東方典礼カトリックが圧倒的多数派のようです。正教会はカトリックの4~5倍ということです。キーウ系と独立系の正教会は2018年に合体しています。

今回の侵攻では破壊された教会が60か所ほどあり、そのうち3分の2がモスクワ系の正教会だそうです。東部や南部はモスクワ系正教会の比率が高いためにそうなったのでしょうが、とくにモスクワ系教会への攻撃を避けていたわけではなさそうです。

そうすると、ブチャの教会がなぜ無傷だったのかという私の疑問は解決しないことになります。そもそもあの教会がモスクワ系なのかキーウ系なのかわかりませんけど…。

2012年の衛星写真ではまだ塔の部分が完成していませんので、10年以内に建築された比較的新しい教会のようです。

モスクワ郊外のロシア軍主聖堂

カテドラル大聖堂やサレジオ教会のように教会は一般的に白を基調にしたものが多く、ロシア正教も例外ではありません。ニコライ堂は正教です。

ところが、このロシア軍主聖堂(グラーヴニ・フラム・ヴォオルジョンニフ・シル・ラシー)は不気味な色彩で、何か不安感を増幅させます。モスクワ近郊のパトリオット公園(パルク・パトリオト)内にあります。もちろんロシア正教の教会になります。

ドイツ軍戦車の車体などを溶かして鋳造した部材を使っているそうです。2020年に対ドイツ戦勝75年記念で建設されています。

昨日(4/24)はちょうど正教の復活祭でした。ニュース映像が流れていましたが、ロシア正教では十字の切り方が右から左のようです。国連事務総長は復活祭停戦を呼びかけていましたが、一顧だにされなかったようです。

プーチン大統領が参列していた救世主ハリストス大聖堂教会は2000年に再建されていますが、もともとは1812年ナポレオン戦争の戦勝記念で建設されたものです。

ロシア正教もウクライナ正教もユリウス暦を採用しています。ユリウス暦の正教ではクリスマスは年が明けた1月7日だそうです。

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