埼玉「越生」と群馬「生越」、どちらも「おごせ」

「越生」と「生越」

「越生」または「越生」で地理院地図を検索してみました。

群馬昭和村生越おごせ
埼玉越生町おごせ-まち
岐阜岐阜市田生越町たしょうごえ-ちょう
大分豊後大野市緒方町越生こしお
▲越生と生越

東武越生線があり、JR八高線の越生駅があることから、埼玉県越生町の「越生」は、難読ではあっても認知度は高いものと思われます。越生町Webサイトには由来について次のように記載されています。

語源については諸説がありますが、平野と山地の接点にあたる越生からは、秩父に向かうにも、上州に向かうにも尾根や峠を越えなければなりません。それに由来した『尾根越し(おねごし)』の『尾越し(おごし)』という言葉から変化したという説が有力視されています。

越生町>越生町とは? 町名の由来

越生から秩父方面は明らかに峠越えになりますが、越生は必ずしも東京から群馬に向かうメインルート上にあるわけではありません。

八高線の最高標高は158m
八高線(地理院タイルを加工)

越生から群馬はそれほどの峠越えにはならないはずです。

八高線の標高

八高線の最大標高地点は金子駅の少し南側で150m台ということです。拝島駅から北藤岡駅までの標高を調べてみました(数値はアバウトです。駅の基準標高ではありません)。

八高線各駅の標高
八高線各駅の標高

越生駅はこの区間ではもっとも標高が低いことがわかります。たいした勾配ではないにせよ、北に行こうが南に行こうが上り勾配になるわけです。市のサイトでは秩父と上州の2方向が例示されているだけですが、実際には西と南北の3方向が尾根超えになると言えなくもありません。

問題の核心は、「おごせ」に「生越」ではなく「越生」の文字を当てたことです。「生」は川崎市麻生区(あさお-く)のように「お」と読む場合があります。「生越」を「おごし」あるいは「おごせ」と読むのは私の中では納得できる範囲内です。

1文字目の「生」を「お」と読むケースは実在します。

秋田田沢湖町生保内おぼない
山形酒田市生石おいし
岡山笠岡市生江浜おえはま
▲1文字目の「生」が「お」

「生越」は「おごせ」と読めなくはありませんが、「越生」で「おごせ」と読ませるのは無理があります。ちょっと物足りないのです。

たしかに「越」を「お」と読むことがあります。千葉市緑区と大分県津久見市には越智小学校があります。「越智」の地名は松山市と奈良県高取町にもあります。

「生」は「せ」とも読みます。あいにく「早生」の地名は見当たりませんが、岡山・兵庫県境に「日生(ひなせ)駅」があります。もともと「せい」の音読みは常用漢字表にあるわけで、二重母音が短母音に短縮化されたと考えればいいだけのことです。

「ご」はどこから?

「お」と「せ」に関しては問題はありませんが、「ご」はどこから湧いたのでしょうか? いくらなんでも「生」を「ごせ」とは読まないでしょうから、「ご」は「越」管轄のはずです。「越」を「こえ」あるいは「こし」系統で訓読みする事例は豊富にあります。

埼玉谷市こしがや-し
埼玉かわごえ-し
新潟じょうえつ-し
福井前市えちぜん-し
▲「越」を含む現存市
秋田由利郡北打
由利郡南打
~UTETU-むら→由利本荘市
宮城登米郡石いしこし-ちょう→登米市
宮城刈田郡河町こすごう-ちょう→白石市
福島田村郡大おおごえ-まち→田村市
神奈川鎌倉郡腰こしごえ-まち→鎌倉市
新潟西蒲原郡打うちこし-むら→新潟市
石川石川郡鳥とりごえ-むら→白山市
兵庫赤穂郡坂こし-ちょう→赤穂市
▲「越」を含む消滅自治体

「ご」はどう考えても「越」の所管だと思われます。鎌倉時代から「越生郷」の地名はあったそうです。最初から「越生」で「おごせ」だったのでなく、たとえば「尾越生」の「尾」が何かの機会に脱落して、「越生」で定着したのではないかと思ったりもします。

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