政党支部への寄付で所得税控除を受けた5議員

寄付控除

たとえば日本赤十字社に対して寄付をした場合、その寄付額(年間所得額の40%が上限)から2000円を引いた金額が年間総所得から控除されます。政党あるいは政治団体に対する寄付は、所得控除ではなく税額控除を選択することもできます。もちろん領収証添付を要します。

【外部リンク】
■日本赤十字社>税制上の優遇措置について
■国税庁>No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
■国税庁>No.1260 政党等寄附金特別控除制度

個人Xが政治団体Yを新たに設立した場合、政治団体Yの当初資金がXの寄付によるケースは少なくないはずです。この税制上の優遇措置自体は否定されるものではありません。

2022年までの5年間で1289万円のキックバックを受けた菅家一郎氏は「自由民主党福島県第四選挙区支部」の代表者でした(現在は第三支部長)。第四支部の2021年収支報告書は1月31日付で次のように訂正されました。

前年からの繰越額プラス104万
清和研からの寄付プラス574万
菅家氏の寄付マイナス678万
▲菅家氏の収支報告書訂正(2021年分)

菅家氏は清和研からの2年分のキックバック(2020年の104万と2021年の574万)を自らの寄付として2021年収支報告書に虚偽記載していたわけです。不記載訂正には4パターンありますが、このうち支出訂正を伴わないBパターンに属します。

寄付の減額で訂正していた菅家氏

Bパターンは、厳密には不記載ではなく虚偽記載です(菅家氏は記載を主張しています)が、派閥からの寄付を何に置き換えて記載していたかで、さらに細分化できます。

個人パーティー武田良太宮本周司西村康稔
自分からの借入橋本聖子
自分からの寄付簗和生、菅家一郎、小田原潔細田健一亀岡偉民高鳥修一
▲Bパターンの小分類

菅家氏の場合、派閥から還流された裏金を自分からの寄付として支部の収支報告書に計上し、支部では「寄附金(税額)控除のための書類」を発行して、個人所得から148万2300円の税額控除を受けていたということです(国庫返納済み)。

控除を受けていなければ、裏金を収支報告書上で処理するに当たって便宜的に寄付として計上したのだという言い訳は成立します。裏金を原資にして所得税控除まで受けているなら、派閥からのキックバックを個人所得として受け取っていたことにほかなりません。

菅家氏は所得税の控除分は政治活動に充てたと述べていますが、その分の報告はどこに記載されているのかという話になるはずです。訂正すればそれで済んでしまうことが最大の問題のような気がします。

稲田、平井、福岡、吉田の各氏

稲田朋美氏は2022年までの5年間で計196万円の不記載がありました。10万円の加藤竜祥氏は政務官を辞任しましたが、稲田氏は自民党幹事長代理をそのまま務めています。

稲田氏は2020~22年に自ら代表を務める「自由民主党福井県第一選挙区支部」に計202万円を寄付し、所得税の一部を控除されたことを認めています。稲田氏の不記載は資金管理団体「ともみ組」で処理されており、派閥からの裏金が原資になったかどうかはわかりません。

金額的には接近しています。税控除を突かれないように、支部ではなく「ともみ組」で処理した可能性がないわけでもありません。

平井卓也・元デジタル担当大臣(現職は自民党広報本部長)は2020年の寄付1000万について、税控除を受けたことをTV番組で認めました(2021年の500万は控除を受けていないということです)。

関口昌一・参院議員会長らとともに茂木派を退会した福岡資麿(たかまろ)参議院政審会長も2022年に党支部に200万円を寄付し、約67万円の控除を受けたことを認めています。

野党では立憲の吉田統彦(つねひこ)代議士が2022年までの3年間で約5000万を政党支部に寄付して所得税控除を受けているということです。吉田氏は次のように述べています。

立憲民主党愛知県第1区総支部に対する寄附は、国会議員歳費ではなく、医師として勤労した結果適切な対価として得た収入、個人の不動産収入、大学教官としての報酬等の一部を、総支部における職員給与等人件費等として支出するために行ったもので、事務所運営のために、議員個人が身銭を切って寄附した資金であり、立憲民主党愛知県第1区総支部に対する寄附は何ら問題がないと考えており、寄附金控除についても同様です。

選挙ドットコム>報道に関するご説明 2024/06/07

検討事項の1つ…

菅家氏の「自由民主党福島県第四選挙区支部(2022年は第三選挙区支部)」の収入額と菅家氏本人による寄付額は次のとおりです。この寄付は裏金が原資です。

菅家一郎2020年2021年2022年
当年収入額(A)21,168,00751,526,87023,108,356
菅家一郎(B)2,200,0005,234,4700
B/A10.4%10.2%0.0%
▲「自由民主党福島県第四選挙区支部」収支報告書(令和2年分など)

稲田氏の場合は、資金管理団体「ともみ組」で裏金処理されましたので、必ずしも裏金が原資とは限りません。

稲田朋美2020年2021年2022年
当年収入額(A)42,417,46874,163,17039,921,832
稲田朋美(B)225,000900,0003,067,735
B/A0.5%1.2%7.7%
▲「自由民主党福井県第一選挙区支部」収支報告書(令和2年分など)

岸田派の平井氏は三世議員で実母からの寄付もあります(東京在住の平井姓からの寄付が別途あります)。いわゆる裏金議員ではありません。

平井卓也2020年2021年2022年
当年収入額(A)91,244,05290,945,87764,677,758
平井卓也(B)10,000,0005,000,0007,388,000
平井温子(C)17,388,0007,388,0007,388,000
(B+C)/A30.0%13.6%22.8%
▲「自由民主党香川県第一選挙区支部」収支報告書(令和2年分など)

茂木派を抜けた福岡氏も裏金議員というわけではありません。

福岡資麿2020年2021年2022年
当年収入額(A)39,571,91833,694,42066,455,890
福岡資麿(B)002,000,000
B/A0.0%0.0%3.0%
▲「自由民主党佐賀県参議院選挙区第一支部」収支報告書(令和2年分など)

吉田氏の場合は2000万前後を寄付として拠出しています(議員歳費は満額受領なら年2200万弱です)。夫妻?の寄付は総支部収入の約半分に該当します。これがアウトなら、吉田氏的には議員活動を続けられないことになりかねません。

吉田統彦2020年2021年2022年
当年収入額(A)29,346,00452,566,03235,343,862
吉田統彦(B)15,000,00018,375,09517,000,000
吉田絢子(C)900,0003,900,0003,660,000
(B+C)/A54.2%42.4%58.5%
▲「立憲民主党愛知県第1区総支部」収支報告書(令和2年分など)

そこまで制約を強めることが妥当なのかどうかという議論はあるべきです。即時完全公開されるなら企業団体献金も政治資金パーティーもOKという考え方はあり得ます。

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