1971年1月19日の屋久島、疑惑の最小湿度0％

私はてっきり2005年4月9日に旧・高山測候所で観測された相対湿度0％は「日本唯一」だと思っていました。ところが、1971年1月19日に旧・屋久島測候所で最小湿度0％が記録されていることに気づいてしまったのです。

主に内陸の33観測所を対象に最小湿度を調べたのは去年の6月でした。

最小湿度0％は高山のみ、3％が甲府、4％が河口湖、松本、軽井沢、飯田でした。この顔ぶれからしても、私が内陸に的を絞ったのはそれほど不適切ではないはずです。当日の高山では朝6時に気温0.1℃で湿度91％でしたが、昼2時には気温21.5℃で湿度3％になっています。

先日は、2022年の全国の最小湿度を集約しました。最小湿度の上位20地点のうち、沿岸部と言えるのはアメダス島原くらいでした（6％）。

ところが、よりによって屋久島で湿度0％が観測されているのです。雨の多い日本でも有数の多雨地点が屋久島です。年降水量の平年値は4651.7ミリです。東京（1598.2ミリ）の2.9倍、大阪（1338.3ミリ）の3.4倍に相当します。

1999年の屋久島は年降水量が6294.5ミリで気象庁データとしては日本歴代4位です。年5000ミリ以上を過去10回観測しています。えびの、魚梁瀬、天城山の3アメダスとともに私は四天王扱いをしています。

旧・屋久島測候所が空港に移転したのは1975年ということです。1971年は島の北端に測候所がありました。この立地で湿度0％はちょっと考えにくい話です。

屋久島の直径は30キロありません。赤マーカーが東京駅だとすれば、南海岸は横浜駅です。蒲田付近に九州最高峰で標高1900ｍ超の宮之浦岳がそびえ立っています。

当時の観測データは6時間ごとの数値しか公表されていません。

▲気象庁＞1971年1月18～20日の屋久島

19日朝9時に湿度29％で南西の風です。南の風なら吹き下ろしになりますが、南以外では海風です。海風ならたっぷりの水蒸気が運ばれるはずです。最小湿度0％が観測されたのは正午前なのでしょう。午後3時の東北東の風5.5m/sでは湿度0％は不可能です。

屋久島の年最小湿度をグラフ化してみました。

10％未満はほかに1968年4月21日に8％が観測されているだけです。

富士山では最小湿度1％が通算20回観測されていますが、0％はまだありません。屋久島の湿度0％は1000年に1度も期待できなそうなレベルです。南風が吹き続ければ不可能ではないのかもしれません。ただ、当日の屋久島の最高気温は17.1℃です。湿度0％をもたらすフェーン現象ならもっと上がるはずです。

屋久島の1月の最小湿度TOP10は次のとおりです。1971年1月はやけに湿度が低かったようです。

1968年から1972年までの5年間の月平均湿度は次のとおりです。青地白抜きは1950年から2022年までの各月の最小湿度TOP3です。