室戸岬
1920年に開設された「中央気象台付属室戸測候所」は、1936年に「中央気象台室戸岬測候所」に改称され、2008年の無人化で「室戸岬特別地域気象観測所」に移行しています。富士山頂より早い1960年設置の気象レーダーは今も稼働中です。
道路脇の案内標識は「室戸岬測候所」のままです。無人化以前に設置されたものが残っているだけかもしれません。
露場は灯台付近ではなく、24番・最御崎寺(ほつみさきじ)より奥です。観測露場の近くには標高185mの三角点があります。
開設から100年以上になりますが、1度も移転していないようです。
最大瞬間風速84.5m/s「以上」
1934年の室戸台風では最大瞬間風速60m/s台を観測したようですが、この数値は今は採用されていません。
当時、中央気象台付属室戸測候所では最大瞬間風速60m/sを観測したのを最後に観測機が故障し、正確な数値は分かっていない。
Wikipedia>室戸台風
日本では最大瞬間風速80m/s以上が過去5回観測されています。そのうち2回は富士山、2回は沖縄の離島です。本土の平地では室戸岬が唯一となります。
91.0m/s | 富士山 | 南南西 | 1966/09/25 | 1966年24・26号 |
86.0m/s | 富士山 | 南南西 | 1969/08/05 | 1969年7号 |
85.3m/s | 宮古島 | 北東 | 1966/09/05 | 第2宮古島台風 |
≧84.5m/s | 室戸岬 | 西南西 | 1961/09/16 | 第2室戸台風 |
81.1m/s | 与那国島 | 南東 | 2015/09/28 | 2015年21号 |
1961年の室戸第2台風ですが、やはり「≧」が気になります。次のような経緯だったそうです。
当初の風車型風向風速計は観測記録の上限が60m/sだったのです。台風の眼が近づいてくると急速に風が強まり、記録紙のスケールアウトは確実になってきました。担当者が大阪管区気象台の測器課や観測課と相談をし、記録器の電気回路に「抵抗」を入れて、記録ペンの振れ幅を小さくすることになりました。そうして、何とかスケールアウトを防ぐことができたのです。この時の緊張感は今でもよく憶えています。しかしこれで一件落着ではありませんでした。台風通過後、ただちにこの記録器は気象庁本庁に送られ、専門的な検査の結果、「84.5m/s以上」を第2室戸台風の「最大瞬間風速」とすることになったのです。
月刊うちゅう 2013年8月号 5-6ページ
60m/s台の実績があるのに、わざわざ上限60m/sの機器を設置した理由があまり理解できません。結局、台風が接近してくる中であたふたして、記録紙の幅に収まるように調整した結果が「≧84.5m/s」のようです。
2020年~2022年の観測値
2020年は年平均風速が全国4位でした。年最高気温は33℃台、年最低気温は氷点下に達せず、年較差は本土最小レベルです。
年降水量 | 2703.0ミリ | 215位 | /1293地点 |
年平均気温 | 17.3℃ | 108位 | /922地点 |
年最高気温 | 33.3℃ | 736位 | /922地点 |
年最低気温 | 0.3℃ | 63位 | /922地点 |
年較差 | 33.0℃ | 874位 | /922地点 |
年平均風速 | 6.6m/s | 4位 | /921地点 |
年日照時間 | 2290.7時間 | 12位 | /841地点 |
2021年の年平均風速は全国3位です。
年降水量 | 2939.5ミリ | 134位 | /1293地点 |
年平均気温 | 17.1℃ | 124位 | /921地点 |
年最高気温 | 31.4℃ | 882位 | /921地点 |
年最低気温 | -2.1℃ | 91位 | /921地点 |
年較差 | 33.5℃ | 870位 | /921地点 |
年平均風速 | 6.9m/s | 3位 | /920地点 |
2022年の年平均風速は6.2m/sで、統計切断を無視すると1958年の6.1m/s以来の穏やかな年でした。ただ、風速計ヘタレ疑惑が感じられなくもありません。
年降水量 | 2366.5ミリ | 234位 | /1285地点 |
年平均気温 | 17.1℃ | 116位 | /916地点 |
年最高気温 | 33.7℃ | 625位 | /916地点 |
年最低気温 | -0.1℃ | 58位 | /916地点 |
年較差 | 33.8℃ | 862位 | /916地点 |
年平均風速 | 6.2m/s | 9位 | /915地点 |
年日照時間 | 2287.3時間 | 34位 | /842地点 |
2006年11月27日まで観測露場に地上41.8mの測風塔が設置されていましたが、それ以降は灯台に隣接する海上保安庁の敷地内に設置された地上20.8mの測風塔に移っているようです(標高は161m)。したがって、平均風速については2006年11月に統計切断の赤線があります。
室戸岬の月平均風速は2022年12月から2023年3月まで4か月連続で統計切断後の最低でした。4月以降は回復しています。
猛暑日と真冬日は1回だけ
室戸岬で最高気温が35℃に達した猛暑日は1942年7月30日の1度だけです(日最高気温35.0℃)。海に近く風も強いという条件ですので、最高気温が氷点下の真冬日も1922年1月20日の1度だけです(日最高気温-0.1℃)。
室戸岬からもっとも近い4点観測所はアメダス安芸になりますが、直線距離で35キロほど離れています。気温観測を伴う観測所としては高知県では最東端です。
年平均気温は次のように推移しています。岬の先端ですので都市化の影響は受けないはずです。
日最低気温が氷点下となる冬日の日数です。冬日が2桁だったのは1984年が最後です。年間を通じて1回も氷点下にならない年もちらほらあります。
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