規制していた? ツール・ド・北海道死亡事故

【2023/10/01追記】歯切れの悪さと不自然な対応が際立っていましたが、警備員は規制することなく車を通していたことが判明しました。ロードレースにはほぼ関心のない方が本当に吹上温泉に行こうとして対向車線を走行している動画が昨日公開されています。

ロードレース

9月8日にロードレースの第38回ツール・ド・北海道で死亡事故が起きています。ロードレースに事故はつきものですが、対向車線の乗用車との正面衝突はあまり聞きません。運転席フロントガラスに開いた大きな穴がダイブの衝撃を物語っています。

第一報を聞いたとき、右カーブということでしたので、私はてっきり乗用車側がセンターラインをはみ出したのかと思いました(A)。

右カーブ

実際には、競技中の自転車がいわばショートカットのように反対車線に出てしまってのガッチャンコだったようです(B)。事故が発生したのは大会初日です。174キロで争われる第1ステージには山岳ポイントが2か所設定されていました。

事故現場付近の山岳コース
大会公式パンフ17ページ

④と⑤が山岳ポイントのチェック地点です。事故は2つ目のチェックポイントを過ぎて、十勝岳温泉入口の丁字路を右折した下り坂で起きています。ここからの約1.8キロで174m差を下りますので、時速が100km/h近くに達しても不思議ではありません。この区間のあとも上富良野の市街地まで下りは続きます。

事故現場
事故現場(地理院タイルを加工)

第4集団の選手だった

死亡した選手は第4集団だったそうです。後続の選手がもう1人落車しているようです。

第1集団2人
1分遅れで第2集団4人
1分遅れで第3集団約20名
5分遅れで第4集団約20人(死亡した選手は3番手)

チェックポイントを過ぎた直後の下り坂ですので、無理に仕掛ける局面ではありません。集団の先頭に立っても前の集団とは5分差があるのです。石や路面の亀裂を避けようとしたとか、接触しそうになって反対車線に膨らんだという理由のほうが合理的に思えます。

【2023/09/20追記】その後の報道では、追い抜こうとしたように見えたと後続の選手が語っています。

ストリートビューが2011年のものしかありませんので特定しづらいところですが、事故現場はたぶんこの右カーブだと思われます(ニュース映像では右矢印看板がありません)。間違っているかもしれませんが、どうせこの辺りはこんな感じです。

事故現場

さて、最大の謎は交通規制していたのになぜ乗用車が走っていたのか、です。規制前に入って1時間ほど待機していた可能性は否定できません。

規制前だったと言う運転手

待機可能な場所

2011年のストビューですから、今もこの状態とは限りません。次の画像の奥に車を停めていたら、レースの先導車両などの関係者も気づかないものかもしれません。

待機可能な場所

では、乗用車の63歳運転手はここで少なくとも1時間何をしていたのかという話になります。第3集団と第4集団は5分差です。川が近くにあることから魚釣りでもしていて、レースが終わったと思い込んで出てきたと言うなら話はわかります。

それなら警察で事情を説明するはずです。「吹上温泉に行くため規制前だったので通行した」という説明が事実なら、そもそも規制されていなかったのではないかという疑惑が生じることになります。

【2023/09/20追記】自転車の対向車線でスマホ?を構えてレースを見ている63歳運転手の映像が出てきました(上記箇所ではありません)。ということは、この運転手はまだ20~30名しか通過していないのに走り出したことになります。あまりロードレースに詳しくなくて、20チーム100人参加ということを知らなかったのかもしれません。
 ひょっとすると、会見を含めて一連の報道に横たわる歯切れの悪さは、63歳運転手の素性によるものかもしれないという話にもなります。

本来の規制場所

本来の規制箇所はこんな場所です。ここから7キロ奥が事故現場になります。

本来の規制箇所

最後尾の選手が通過して規制解除になるまで、左側の駐車帯で車両を待機させればいいわけです。数台しか停められませんので車列が伸びてしまうかもしれませんが、見通しはいいので規制をかけるなら格好の場所です。

本来の規制箇所
本来の規制箇所(地理院タイルを加工)

警備会社は青マーカーの丁字路と「2キロ手前」に警備員を複数人配置していたと言っているようです。「2キロ手前」がよくわかりませんが、事故現場から2キロ地点はピンクのマーカー付近です。この辺りには駐車帯や脇道がありません。

というわけで、本当に所定の位置で規制をかけていたのかが当面の焦点になりそうです。目印が少ない山道では地図だけ渡しても誤解してしまうことはあり得ます。

謎は解けても後味は悪く(2023/10/01追記)

動画の撮影者はこれが何人かの首を飛ばしてしまう深刻な告発動画になるとは気づいていないのではないかと思われます。動画は0:20から始まるように埋め込みました。

警備員とのやりとりは次のようなものだったようです。

ガードマンの方がいらっしゃいまして(略)ちょっと止まってですね、声かけまして、行けるんですかって言ったら、「ああ行けるよ」って言うからそのまま登って行きました。

🚴ツールド・🚵北海道🚗2023  上富良野→吹上温泉線R291号 登り車線規制なし 怖かった!!【孤独のドライブ】 0:58~

1:11 2台通過(第1集団)
1:55 4台通過(第2集団)
2:30 25台ほど通過(第3集団)
3:37 停めていた車に乗り込む運転手(おそらく衝突車両)
4:23 事故現場
4:41 第4集団通過(2人先行しやや離れた3台目が事故の自転車?)
5:05 第5集団通過
6:15 前方に停車中のトラック
7:40 トラックの後ろで待機中、後方にも後続車(事故後に現場を通過した車両?)

レースの主催は公益財団法人ツール・ド・北海道協会です。名誉職でしょうが、会長の石﨑聖子氏とは橋本聖子氏の戸籍名です。9月19日になって記者会見に臨んだ山本隆幸理事長は国交省の北海道開発局長や北海道局長、岩田地崎建設の会長、北海道経済連合会の副会長などを歴任しています。

会見に同席した高松泰常務理事も国土交通省で北海道開発局長や北海道局長を務めており、北大大学院の特任教授・客員教授に転じています。橋本氏は自転車のトラック競技で五輪出場していますが、ロードレースの専門家は三役に1人もいないという面白い組織構成です。

事故が8日、会見が19日、スマホ撮影中の映像は20日になって公開されました。遅くとも事故翌日には状況はおおむね判明していたはずです。そのうえで隠蔽(虚偽説明)に走ったことになります。

庇われていたのは63歳運転手ではありませんでした。北海道に限りませんが補助金や交付金なしには成立しないのが地方です。警備会社と警察との関係も気になるところです。あれとそれとこれとの思惑が一致して、虚構のストーリーが組み立てられようとしていたのかもしれません。

安全対策検討会の設置(2023/10/06追記)

上の動画は未公開部分を含めて警察に提供されたようで、6日付でツール・ド・北海道協会に第三者による安全対策検討会が設置されました。

残念ながら、ロードレースの文化は日本には根付いていません。止めなければあの坂道のカーブでそういう事故が起こる可能性があることを知っていたら、警備員も止めたはずです。いずれにせよ、アスリート・ファーストの大会ではなかったわけです。

【2023/10/31追記】「事故調査委員会」ではなく「安全対策検討会」という名称にモヤモヤが残ります。事故の原因を突き詰めてから安全対策の議論に移行するのが順序というものです。噂のレベルですが、事故車両は規制前に規制区域に入ってコースを往復していたという話もあります。

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