銅鑼湾書店事件、拉致した犯人の告白

見せつけるため?

2015年10月から12月にかけて香港・銅鑼湾書店の関係者5人が次々と「失踪」する事件がありました。雨傘運動は2014年で、行政長官選挙が2016年3月に予定されていました。事件の詳細は末尾外部リンク群に譲ります。

5人は中国当局に拘束されたわけですが、私が不思議に思っていたのは中国当局の意図です。禁書を中国人に販売(郵送)した人物を中国国内で拘束するのはセーフです。1人目のオーナーはタイで、5人目の株主は香港で拉致されています。

これは明らかにアウトです。5人目に関しては香港からの出境記録が残っていないそうです。釈放後、本人は自ら出頭したと語るだけで中国に入ったルートを明らかにしていません。

1人や2人ならいざ知らず5人も拉致すると、さすがに国際的なニュースになるでしょう。中国当局としては、ある程度のニュースにしたいという思惑もあるのだろうと私は考えていました、

単に銅鑼湾書店を閉店に追い込むだけなら(あるいは禁書を販売しないようにするだけなら)、5人も拉致する必要はありません。ましてわざわざ香港に帰す理由もありません。人道的な見地から帰国を認めたはずはないのです。

帰す以上は何らかのメッセージとともに香港に帰ってもらう必要があります。4人目に釈放された店長は釈放2日後に告発会見を開きます。これが中国当局にとってハプニングだったのか、それとも想定内だったのかの評価は私にはできかねます。

店長の足取り

ただ、この告発会見で拘束の詳細が語られたことは、結果的に2つの効果をもたらしています。中国は国際的な批判を浴びることになりますが、一方で香港市民や台湾に対しては確実にプレッシャーを与えることができたのです。

(埋め込んでいたニュース動画が削除されました)

とうとう拉致した側からの証言も飛び出してきたわけですが、やはりその目的は「香港にいるすべてのトラブルメーカーに恐怖心を与える」ことだったようです。今年4月に台湾に亡命した元店長の足取りは次のとおりです。

2015/10/24 深圳市羅湖の入境審査所で「中央専案組」に拘束
2015/10/25 浙江省寧波に連行
2016/2   軟禁先で香港メディアの取材を受ける
2016/3   広東省韶関市に移送
2016/6/14 釈放
2016/6/16 記者会見
2019/4/25 台湾に移住

林栄基元店長の足取り
元店長の足取り(Google Earthプロ)

なお、Wikipedia「銅鑼湾書店」のページでは、2015年10月15日に最初の2人が行方不明になったかのように記載されていますが、日経ビジネス16/1/13などはこの2人が10月26日に失踪したとしています。

【外部リンク】
香港独言独語>銅鑼湾書店(2)(個人ブログ、2005/2/9)
香港BS>反中国書店の香港人経営者が行方不明(2015/11/16)
Newsweek>香港「反中」書店関係者、謎の連続失踪──国際問題化する中国の言論弾圧(2016/1/6)
BBC>香港の書店で相次ぐ失踪 中国政府の汚職や色恋を出版(動画、2016/1/11)
BBC>失踪の香港書店関係者、中国テレビで過去の犯罪「自白」(2016/1/18)
AFP>香港の出版社員失踪、中国公安が3人の拘束を認める(2016/2/5)
香港BS>誘拐された反中書店の1人がTV出演!そして驚きの発言(2016/3/1)
CNN>失踪の書店主、香港に戻る 拉致説を否定(2016/3/25)
BBC>失踪の香港書店店長「歯ブラシ自殺監視下」にあったと(2016/6/17)
香港BS>中国で失踪した銅鑼湾書店のラムさんが中国当局からの監禁を暴露(2016/6/17)
日経ビジネス>銅鑼湾書店事件、「ノーと言える香港人」の告発(2016/6/22)
NHK放送文化研究所>香港,行方不明だった書店幹部が「テレビでの罪の“自白”は強制されたもの」と表明(2016年8月号)
東洋経済>書店店長の「平凡な香港人」が語る自由の重み(2017/3/23)
社会評論社>【寄稿】香港・銅鑼湾書店(跡?)に行ってきました。(2017/10/26)
香港BS>銅鑼湾書店の桂民海、再び中国で連れ去られる(2018/1/23)
西日本新聞>中国、ゆがんだ捜査 長期拘束の香港元店長語る(2019/5/6)
FNN>中国で逮捕状なしの拘束・尋問  香港を脱出した男が語る恐怖の真相(2019/9/19)
大紀元時報日本>豪に中共スパイが亡命 諜報工作を暴露 専門家「70年来の最大の情報漏えい」(2019/11/25)

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