八丈島のキョン
私の世代で「キョン」と言えば「がきデカ」であり、「ハルヒ」ではありません。ウシ目シカ科のキョンは、成獣の体高(肩高)が約45~50センチで体重は15キロほどということです。キョンは中国南東部や台湾に生息しており、八丈島のキョンは飼育動物です。
私は10年ほど前まで「八丈島のキョン」をアマミノクロウサギやイリオモテヤマネコのように八丈島の固有種だと誤解していました。実際には「八丈島のキョン」は野生種ではなく、空港の近くの都立八丈植物公園(八丈ビジターセンター)で飼われているだけです。
草食ですので、植物公園でも飼えるということなのでしょう。せいぜい十数頭ではないかと思われますが、夜行性ですから獣舎で寝ているのかもしれません。植物公園は入場無料です。

キョンが野生化しているのは伊豆大島です。都立大島公園で飼育されていた十数頭が1970年の台風で壊れた柵から逃走して野生化したということです。

人口より多い伊豆大島のキョン
1970年は台風の当たり年です。台風9号では名瀬測候所で日本歴代5位の78.9m/sが観測されていますが、大島測候所では同年4月から10月までの最大瞬間風速が30m/sを超えたことがありません。巨大台風に起因するものではないようです。

大島公園は島の東側にありますが、今では生息地域は全島に広がり、町役場のある西岸の市街地にも出没するようです。

キョンが町の人口を超えたのは2011年のことのようです。近年は毎年5000頭ほど駆除しているようですが、そのうち駆除頭数が人口を上回ってしまうかもしれません。
茨城県にも進出
千葉県勝浦市の行川(なめがわ)アイランドは2001年に閉園しています。クジャクの飛行ショーや特撮ヒーローのアトラクションショーなどを目玉にプールやバーベキューで集客していたレジャー施設です。閉園後も外房線には行川アイランド駅が残っています(無人駅)。
房総半島で野生化したのは、1980年代以降に行川アイランドから逃げ出したキョンだと言われています。勝浦市の隣にある大多喜町(おおたき-まち)では、来年にはキョンの生息数が町の人口を上回りそうな勢いです。あくまでも私の試算ですが…。

大多喜町の人口は対前年比の平均が98.2%で最新が97.9%ですので「98%」で計算しました。キョンの生息数は平均が112.7%で最新が108.3%ですので「108%」を用いました。
データ期間 | 年率の平均 | 私算係数 | |
人口 | 2005-2023 | 98.2% | 98% |
キョン | 2005-2019 | 112.7% | 108% |
来年ではないにせよ再来年には「人口よりキョンが多い大多喜町」になるものと思われます。キョンは2017年には茨城県神栖市で死体が確認され、2022年には石岡市内の筑波山中でオス1頭がカメラに映り込んでいます。

もし北関東経由で山梨や長野に生息域を広げるなら、西日本に向かって進出するチャンスを掴むことになります。
【2024/07/06追記】2023年9月には栃木県境の筑西市で目撃情報があり、同年12月には下妻市で車に轢かれたオスの死体が見つかっているということです。このほか、伊豆半島にもキョンがいるという話がありますが、確認できていません。

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