矢作川の通称・水源ダム、明治用水の水門で「漏水」とは

武豊町の火力発電所が停止

愛知県豊田市の矢作川から取水している明治用水の頭首工(水門)で大規模な漏水が起きているという事故は、よくわからないことがたくさんあります。

第一報を聞いたとき、ダム(堰)が「漏水」するのなら、ダムが壊れたということではないかと思ったわけですが、要はダムの下に川の水が通るトンネルができてしまったようです。ダム自体が壊れたわけではなく、水をせき止めるダムの機能を果たさなくなったということです。

明治用水
明治用水(地理院タイルを加工)

今の時代、ネットで簡単にローカルニュースを見ることができますが、土地勘がないとピンと来ないものです。地図の✕印が通称「水源ダム」で、水門は「水源橋」とも呼ばれています。青線が明治用水です。

漏水事故の影響で、大阪ガスの火力発電所が運転を取りやめたそうです。大阪ガスがそんなところに火力発電所を持っているのかと思いながら、所在地を調べると知多半島の武豊町(たけとよちょう)にある発電所です。矢作川水系ではなく、水門から直線距離30キロ以上あります。

そこも関係するのかと思いつつ、水門の管理者である東海農政局のWebサイトを確認すると、次の10市3町に影響があるようです。

岡崎市水道工水農水1.04
半田市工水0.98
碧南市水道工水農水1.21
刈谷市工水農水1.33
豊田市工水農水1.39
安城市工水農水1.28
西尾市水道工水農水0.98
高浜市工水農水1.02
みよし市工水1.40
知立市農水1.00
東浦町工水0.95
武豊町工水1.01
幸田町水道工水1.17
▲関係13市町

9市3町の財政力指数

複数の報道では影響範囲が「9市3町」と伝えられています。工業用水に関しては「9市3町」で間違いありませんが、今が田植えの時期の農業用水を含めれば10市3町でした。白地図に落とし込んでみました。

影響範囲

今回の事故とは一見関係なさそうな武豊町も、たしかに影響を受けるエリアに入っています。これはかなり深刻な事態です。上の表の右端にわざとらしく添えた数値は2020年度の財政力指数です。13市町のうち10市町は「1」以上です。

明治用水はこれら裕福な自治体を支える命綱のはずです。明治用水が止まって、修復の見込みも立たないなら大打撃です。

明治用水は1879年から1881年(明治14年)にかけて工事が行われています(完成式典は明治13年)。現在の水門は1958年(昭和33年)竣工の2代目ということです。用水の幹線水路は88キロ、支線が342キロ、田んぼへの引き込み水路まで含めると総延長1430キロだそうです。

大部分は暗渠化等で地下施設になっているそうです。オデーサの地下通路には及びませんが、1430キロならトヨタ本社工場から択捉島までの距離に匹敵します。

矢作川源流部の長野県根羽村に涵養林

トヨタ本社工場は標高60m弱です。豊田JCT近くの上郷工場でも標高34mです。碧海台地を潤す明治用水の水門付近は標高30mほどです。

矢作川の源流は長野県平谷村(ひらやむら)になります。源流部・根羽村(ねばむら)の茶臼山北西斜面に明治用水の水源涵養林が設置されているようです。

矢作川上流部
矢作川上流部(地理院タイルを加工)

ピンクの3地点はアメダス観測地点です。17日までの5月の降水量は稲武で84.5ミリ、小原で72ミリ、阿蔵(あぞう)で104.53ミリで、ほぼ平年並みです。

施設は古いとしても、セメント自体は水中でも固まるわけですので、なんとかなりそうな気もします。なんともならないということはなさそうですが、梅雨入り前に解決しないと、やっかいです。東海地方の梅雨入りは去年が6/13、2020年が6/10です。

耐震工事

どうやら耐震工事が行われていたようです。2019年2月の航空写真では右岸の水源町側が工事中です。

2019年

2021年3月の航空写真では左岸の室町側が工事中です。この工事の際の縦坑は有力な容疑者になりそうです。

素人判断としては無関係ではなかろうと思えてしまいます。

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