クリミア大橋はウクライナが必要としない橋

なるほど納得

クリミア半島とロシアを結ぶクリミア大橋の道路橋で、10月8日の現地時間午前6時過ぎにトラックが爆発し鉄道橋の燃料輸送車両が炎上したということです。

クリミア大橋

私は「ウクライナ情勢MAP」作成時に、国境近くのロシア空軍基地だけでなく国境の鉄道駅をマッピングしていました。いずれ攻撃対象になるはずだと理解していたからです。クリミア大橋はノーマークでした。

クリミア半島はロシアが実効支配していることから、Google MapやGoogle Earthではロシア領扱いになっています。ウクライナ側からすれば不当に占有されているだけです。ウクライナ視点で考えれば、クリミア大橋という国境の橋は必要ないわけです。

そう考えれば、きわめて合理的な攻撃対象です。

クリミア大橋(ケルチ海峡大橋)

併合前のケルチ海峡です。細長い島はトゥーズラ島という名前です。

併合前のケルチ海峡

「ケルチ海峡」の文字付近の衛星写真です。南から道路橋が伸びてきます。

2016年6月

2017年9月です。

2017年9月

2018年に道路橋開通

2018年2月です。右の道路橋は接続しています。

2018年2月

2019年3月です。道路橋は2018年5月に開通していますが、左の鉄道橋はまだ工事中です。

2019年3月

2019年9月です。鉄道橋の開通は同年12月だそうです。

2019年9月

1日遅れのバースデー

プーチン大統領の誕生日は10月7日ということです。道路橋と鉄道橋は30~40mほどの水平距離がありそうです。高低差もありますので、トラックが爆発しても燃料輸送車両の炎上を誘発するとは限りません(引火したという報道もあります)。

そうすると、(1)まずトラックを爆発させる、(2)爆発を視認してスピードを緩めた燃料輸送車両を火器で炎上させる、(3)待機していた車でずらかる、という一連の作業を手際よく実行したことになります。

朝6時なら自動車道路はガラガラのはずです。ただ、その時間に燃料輸送があることを知っていなければ計画できません。1日遅れの誕生日プレゼントになってしまったのは、そういう理由なのかもしれません。

【20:22追記】

この映像(↑)では、走行中のトラックが爆発していますので、自爆テロか自動運転ということになります。私は、トラックを停めて安全なところに逃げてから列車の来るタイミングに合わせて遠隔で爆破して、逃走用の車でトンズラしたものと思っていました。また、意外に交通量もあるようです。

燃料貨物が炎上したのは疑う余地なく引火によるものですが、タイミングが合ったのは偶然のビンゴではないはずです。もちろん警備は厳重になるでしょうが、逃走を考えなくてもいいのなら、2度目・3度目のテロはそんなに難しいことではなさそうです。

また、あんな巨大な切手風絵画を素早く描けるものではありませんので、あらかじめ用意されていたに違いありません。ロシア側も橋に手を出さないように警告していたようです。この事件がどこに行き着くのか注視する必要があります。

ロシアはウクライナと異なりクリミアへの陸路での到達手段がなく、ケルチ海峡フェリーは悪天候によりしばしば停止し、しばしば車両の長い列ができたという限界があったからである。この橋はクリミアを保持するというロシアの決意の象徴であり、クリミアをロシア領に物理的に繋ぐものとなった。

Wikipedia>クリミア大橋

併合前は両国間で国際橋として計画されていたようです。道路橋は16.9キロですが、鉄道橋は全長18.1キロ(トゥーズラ島などを込み)で、17.2キロのヴァスコ・ダ・ガマ橋(ポルトガル)を抜いて欧州一の長さとされています。

【外部リンク】
■BBC>クリミアとロシアを結ぶ唯一の橋で火災 3人死亡とロシア当局 2022年10月8日 15:57
(動画あり)

【2022/10/11追記】クリミア大橋は海面上からの高さが30mほどしかないそうです。通常、国際海峡の橋は海面からの高さが50~60mです。大型船を通すにはそれだけの高さが必要になるからです。もともとは観光客を引き込もうとしたウクライナが架橋を望んでいたわけですが、アゾフ海からの大型貨物船が黒海に出ていけないため、むしろ邪魔な橋になっていたようです。

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