猿はいない猿島、鹿がいる友ヶ島、アメダスは友ケ島

2019年5月27日に最大瞬間風速全国1位を観測したのは和歌山県のアメダス友ケ島でした。紀淡海峡に蓋をするかのように連なる友ヶ島は、地ノ島、虎島、沖ノ島、神島の総称です。

対岸の西4km先には淡路島が構えています。4島で最大の島は定期船の船着き場がある沖ノ島になります。沖ノ島＝友ヶ島という理解でも、あまり差し障りはないようです。なお、定期船は5月27日と翌28日には全便欠航となっています。

明治初期に築造された友ヶ島灯台は全国23基の保存灯台の1つです。灯台からアメダスの観測露場まで100ｍ足らずです。灯台と露場の間には東経135度の子午線が通過しています。「日本標準時子午線日本最南端の地」の安っぽい標柱が建っています。

友ヶ島にはキャンプ場もあり、宿泊施設もあります。この宿泊施設は定期船第1便の到着より早い時間帯に朝食を提供しています。通年の居住者がいるわけではないにせよ、それで無人島と言えるのか疑問に思わなくもありません。

同じく砲台跡がラピュタ感を醸し出す横須賀沖の猿島では、キャンプは禁止されており、宿泊施設もありません。私の感覚では、猿島は白か黒かで言えば無人島の部類であり、友ヶ島は限りなく有人島に近い存在です。

猿島の沖合に（上陸できない）海堡があるように、砲台跡は当然ながら淡路島側にも残っていますが、紀伊半島側にも砲台跡があります。ラピュタの香りは船に乗らなくても味わえるわけです。

砲台の遺構は函館や対馬など各地に存在します。猿島と友ヶ島は東京湾と大阪湾への侵入を防ぐいわば最後の砦です。ただし、海岸砲台は空からの攻撃や潜水艦に対してはほぼ無力です。

キャンプだけでなくコスプレや花火やドローンが禁止されている猿島とは異なり、猿ヶ島では（今のところ）そのような制限はないようです。猿島にサルはいませんが、友ヶ島にはシカやリスやクジャクがいます。

管理されたラピュタが猿島で、シカの糞がキャンプ場のそこら中に転がっていても手を加えないのが友ヶ島です。そういう意味では、猿島のほうが有人島的であり、友ヶ島では無人島の雰囲気に浸ることが可能です。

無人島・有人島についても日本標準時子午線のように複数の考え方がありそうです。なお、虎島は沖ノ島の陸繋島ですが、沖ノ島西端から虎島西端まで3kmほどあります。海岸線延長1.6kmの猿島とはそもそも規模が違います。

友ヶ島の一般的な表記は「友ヶ島」です（観光協会、地理院地図、Google Map、Wikipediaなどは「友ヶ島」）が、困ったことに気象庁Webサイトでは「友ケ島」が用いられています。観測所名称としては「友ケ島」であると理解するしかありません。

このため、当サイトにおいては観測所名としては「友ケ島」表記としています。アメダス友ケ島は沖ノ島の西端部分（下の画像の中央）です。灯台（右上）の先で灯台より下ったところに露場が設置されています。

1998年開設で標高は44ｍとされています。なお、当地のフェンスに設置されたプレートには「友ヶ島地域気象観測所」と記載されています。

2020年の観測値は次のとおりです。和歌山県のイメージからすると降水量の少なさが目を引いてしまいますが、和歌山ではなく徳島もしくは大阪と考えればさほど意外でもありません。日照時間は平年値でも年2200時間です。

▲アメダス友ケ島の2020年観測値

2021年は最低気温が3年ぶりに氷点下になりました。

▲アメダス友ケ島の2021年観測値

2022年の年降水量は1000ミリを切りましたが、25年間で1000ミリ以下は4回目です。