川俣町から南相馬市へ向かう途中の飯舘村で

福島県飯舘村では河川や道路や家屋の被害はなかったことになっています。それはそうなのでしょうが、人的被害は出ています。こんなニュースがあります。

★12日夜、75歳男性が川俣町から勤務先の南相馬市に向かった
★13日朝、飯舘村で運転席まで水が浸かった無人の車が見つかった
★14日朝、近くの用水路で遺体が見つかった

新聞配達のアルバイトだそうです。釈然としないのは、川俣町が中通りに属し、南相馬市は沿岸の浜通りだということです。分水嶺は伊達郡川俣町と相馬郡飯舘村の町村境にあります。県道12号線の町村境の地名はズバリ「水境」です。

飯舘村付近(Google Earthプロ)

川俣町から南相馬市までルート検索すると47分です。隣接する福島市や二本松市なら33分です。わざわざ飯館村を越えて南相馬に通っているのは、震災で川俣町に引っ越したという事情があるからなのかもしれません。

普通のニュースなら、「飯舘村△△で遺体が見つかった」となるはずですが、あいにくこの件ではそこまで報道されませんでした。出発点が川俣町で目的地は南相馬市、事故現場は飯舘村というアバウトな情報しかありません。

飯舘村と南相馬市をつなぐ2車線道路は、県道286号線と12号線です。常識的に考えて、目的地は旧・原町市が有力です。出発地が川俣町なら12号線に限られるはずです。

車が水に浸かっているのですから、事故現場は道路と川が並行しているか交わっている地点です。等高線が入った地理院地図で12号線を辿ってみると、増水時にここは危険だと思われる箇所がありました。

で、このページを書き始めたわけですが、警報時刻を確認するために福島県Webサイトの「台風第19号による被害状況即報 (第10報)」を開いてみると、「深谷地区」との記載があるのを見つけました。

ビンゴです。12号線の深谷地区入口の標高は470mで、深谷地区出口となる駐在所手前は438mです。危険箇所はほぼ中間にあり、その標高は438mです。下った道路がフラットになっている地点です。

2014年9月撮影のストビューです。右前方に見える枯れ草部分が新田川です。丘を回り込むように流れています。トラックのあたりで、県道12号線と新田川はニアミスします。川は道路より急カーブですので、濁流は溢れてしまうでしょう。

大森堰付近(Google Earthプロ)

飯館の時間降水量は次のとおりです。朝刊が販売所に届くのが2時頃だとして、多少の余裕を見て0時前に出発したのかもしれません。雨のピークは過ぎていますが特別警報発令中です。

12日10:00  1.5mm
12日11:00  6.0mm
12日12:00 16.5mm
12日13:00  6.0mm
12日14:00  6.5mm(14:09 飯館村に大雨警報と暴風警報)
12日15:00 16.5mm(15:05 飯舘村に土砂災害警戒情報)
12日16:00 19.5mm(15:48 飯舘村に洪水警報)
12日17:00 25.0mm
12日18:00 34.5mm
12日19:00 29.0mm
12日20:00 32.5mm(19:50 飯舘村に大雨特別警報)
12日21:00 38.0mm
12日22:00 36.5mm
12日23:00 20.5mm
12日24:00 17.5mm
13日01:00 14.0mm
13日02:00  4.5mm

車が発見された13日朝は、遺体のあった用水路はまだ濁っていたに違いありません。水が引いた14日に遺体が見つかったものと思われます。

飯舘村の人口は1950年代をピークに減少を続けています。原発事故当時の風向きの関係で「計画的避難区域」に指定されていましたので(2017/03/31解除)、低地に新しい住宅地が供給されることもなかったわけです。

実際のところ、浸水したのは農地だけなのでしょう。浸水区域に住戸が存在しなければ、浸水による住戸被害も起きないことになります。この現場付近のハザードマップは白です。

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