支柱がある電柱、支線3本の風速計―アメダスえりも岬

台風19号による最大瞬間風速TOP10

西伊豆に上陸した2019年台風19号は、さいたま市付近を通過して、いわき市付近で太平洋に抜けました。台風19号による最大瞬間風速TOP10のアメダス観測点は次のとおりです。

最大瞬間起時観測地点その地点の1位統計開始
44.8m/s12日15:15神津島58.1m/s(2019/9/8)2009~
43.8m/s12日21:17江戸川臨海41.0m/s(2011/9/21)※2009~
43.8m/s12日20:32横浜48.7m/s(1938/9/1)1938~
43.7m/s12日20:56羽田43.7m/s(2019/9/9)※2009~
42.2m/s12日17:16三宅坪田48.4m/s(2019/9/8)2009~
41.5m/s12日21:14東京46.7m/s(1938/9/1)1937~
40.3m/s12日21:20千葉57.5m/s(2019/9/9)1966~
39.9m/s13日04:18えりも岬47.2m/s(2009/10/8)2008~
39.2m/s10日17:51父島59.7m/s(1986/9/28)1968~
38.6m/s12日17:55大島北ノ山38.1m/s(2014/10/6)2009~
▲2019年台風19号による最大瞬間風速TOP10

10地点のうち、4か所が離島で5か所が首都圏です。江戸川と羽田では(10年のスパンしかありませんが)観測史上1位でした。地味にランクインしているのが北海道の襟裳岬です。台風19号は青のマーカー付近で低気圧に変わりました。

台風19号
地理院タイルを加工)

アメダスえりも岬

えりも岬は昨日(11/8)で、日ごとの最大瞬間風速1位が35回目でした。実際に行かなくても、風の強さはストビューで感じることができます。

支柱2本と支線3本の電柱

4本もの支柱を伴う電柱もありました。実は、灯台近くの標高63mに設置されているアメダスの風向風速計にも3本の支線が施されています。風速計の高さは8.1mで標準以下です。当然これらは強風対策だと思われます。

アメダスえりも岬

さて、風速の観測は1秒間に4回行われています。3秒間12回の観測値の平均が瞬間風速で、その最大値が最大瞬間風速です。最大瞬間風速の歴代全国ランキングは次のとおりです。このうち、富士山は今では風速の観測を行わず、剣山は2001年3月限りで観測を停止しています。

最大瞬間観測地点(起日)標高+風速計
91.0m/s富士山(1966/9/25)(観測外)
85.3m/s宮古島(1966/9/5)40m+13.5m
84.5m/s室戸岬(1961/9/16)161m+21.8m
81.1m/s与那国島(2015/9/28)30m+14.4m
78.9m/s名瀬(1970/8/13)3m+20.8m
73.6m/s那覇(1956/9/8)28m+47.8m
72.3m/s宇和島(1964/9/25)2m+33.2m
71.0m/s石垣島(2015/8/23)6m+28.9m
69.9m/s西表島(2006/9/16)10m+10.1m
69.0m/s剣山(1970/8/21)(廃止)
▲最大瞬間風速のTOP10

えりも岬はTOP20にも入りません。アメダスえりも岬における最大瞬間風速1位は2009年10月4日の47.2m/sです。それほど簡単に台風が通る地域ではありませんので、最大瞬間風速や最大風速では目立ちませんが、日常的に風が強いのがえりも岬です。

えりも岬の月別平均風速

このように冬のほうが圧倒的に風は強く、実は夏場に観光に行ってもあまり体感できないことになります。「風の館」では25m/sの人工的な風を体験することができます(冬季休館)。

2020年の観測値

2020年の観測値は次のとおりです。年平均風速は全国1位です(2021~2023年は「日本一の強風地点・えりも岬は日本一涼しい町」のページ)。

年降水量821.0ミリ1227位/1293地点
年平均気温8.1℃785位/922地点
年最高気温26.7℃921位/922地点
年最低気温-10.8℃669位/922地点
年較差37.5℃791位/922地点
年平均風速8.3m/s1位/921地点
年日照時間1771.4時間406位/841地点
▲アメダス襟裳岬の2020年観測値

年最高気温は低いほうから全国2位ですが、1位の観測地点は富士山頂ですので、人家に近い観測地点としては1位という評価になります。26.7℃は8月29日に観測されましたが、これは観測史上1位(1978年12月観測開始)の数値です。26℃を超えたのは2012年9月16日以来2回目でした。

襟裳岬(地理院タイルを加工)

観測施設は先端の灯台マーク付近に設置されています。赤のマーカーが郵便局、緑が駐在所、青が小学校です。直線距離で1.3キロほどです。防波堤もありますので、漁港になっています。

えりも町

幌泉町が「えりも町」を称するのは1970年10月です。開基90周年が契機だったようです。島倉千代子の「襟裳岬」は1961年発売であり、同名の昼ドラが1967年に30分10回で放映されています。歌碑の建立が1971年ですので、観光機運が高まっていたものと思われます。

ひらがな町としては4番目になるようです(1966年6月発足のえびの町が1970年に市制施行)。ニセコの後を追いかけたいということだったのかもしれません。

1955/03/31和歌山県すさみ町1町2村合併(1959年に江住村を編入)
1958/07/01和歌山県かつらぎ町2町1村合併(2005年に花園村を編入)
1964/10/01北海道ニセコ町狩太町から改称
1970/10/01北海道えりも町幌泉町から改称
2003/04/01熊本県あさぎり町1町4村合併
2004/10/01和歌山県みなべ町1町1村合併
2004/10/01高知県いの町1町2村合併
2005/03/01徳島県つるぎ町2町1村合併
2005/03/01佐賀県みやき町3町合併
2005/03/22鹿児島県さつま町3町合併
2005/09/01北海道せたな町3町合併
2005/10/01群馬県みなかみ町2町1村合併
2006/02/01埼玉県ときがわ町2村合併
2006/03/01青森県おいらせ町2町合併
2006/03/01徳島県東みよし町2町合併
2006/03/03福井県おおい町1町1村合併
2006/03/20香川県まんのう町3町合併
2006/03/20福岡県みやこ町3町合併
2006/03/27北海道むかわ町2町合併
2006/03/31北海道新ひだか町2町合併
▲ひらがな・カタカナ町

アメダス観測地点は1978年12月の開設です。すでに「えりも町」に改称されていたことから「えりも岬」の名称が採用されたものと思われます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました