アメダス鳥形山
まだ確定というわけではありませんが、2019年の年間降水量1位は高知県の鳥形山(とりがたやま)ではないかと思われます。尾鷲も屋久島もえびのも箱根も4000mm台ですが、私がチェックした範囲では鳥形山が唯一の5000mm台です。
▲【2020/01/13追記】静岡県・天城山が5552.0mmでした。
アメダス鳥形山で通年観測が始まったのは2011年です。2011年以降のデータを同じ高知県の魚梁瀬(やなせ)と比較してみると、9年目の「初勝利」でした。
魚梁瀬 | 鳥形山 | |
2011年 | 6018.5mm | 4628.5mm |
2012年 | 5340.0mm | 4856.5mm |
2013年 | 3635.0mm | 3527.5mm |
2014年 | 5382.0mm | 5285.0mm |
2015年 | 4742.0mm | 3741.0mm |
2016年 | 4704.5mm | 3659.5mm |
2017年 | 3776.0mm | 3435.5mm |
2018年 | 7194.5mm | 5544.5mm |
2019年 | 4923.0mm | 5075.5mm |
鳥形山の観測施設は標高830m台のヘアピンカーブのところにあります。あいにくストビューはありませんが、航空写真では区画がくっきり映っています。

ここは雨量のみのアメダス観測地点です。なお、アメダス鳥形山の2020年の総雨量は3570ミリで全国47位でした。2021年は3249.5ミリです。
仁淀川町の日本鉱業鳥形山鉱業所
この無人観測施設の近くにあるのが石灰石を採石している日本鉱業の事業所です。愛媛・高知県境の四国カルストからの延長になっているわけです。アメダス観測所から南東1キロ地点に国道439号線と長者川をまたぐ高架施設があります。

ここから4.6キロほど南東にも、同じ方向を向いた配管のような施設が見つかります。

さらに900m南東でも、同じ方向に向かって道路をまたぐ構造物があるのです。

どこまで続くのか気になります。再び900m南東でも、この配管のようなものが国道197号線と新荘川をまたぎます。

そろそろ海が近くなってきました。もう標高50m付近まで下ってきましたが、まだ続いています。

とうとう海に到着しました。ゴールはやはり日本鉱業さんです。ここからは船で運ぶのでしょう。トラックを毎日往復させるより効率的という計算が成立しなければこの設備はつくれないはずです。

2012年8月撮影のストビューを埋め込んでみました。D地点の国道から見ると、屋根付き歩道橋のような構造です。
地理院地図には「鉱石ベルトコンベヤー」と記載されています。総延長は20キロ以上でその大半はトンネルです。私は2年前に須崎に行きました。この存在を知っていれば、鍋焼きラーメンを食べ損ねたとしても見に行っただろうと確信します。
中を見させてはもらえないでしょうが、日本にこれだけの距離の「パイプライン」があるとは知りませんでした。やはりカルスト台地で有名な秋吉台でも美祢市から長門市にかけて住友さんのベルトコンベアが設置されていますが17キロ程度です。

日本鉱業による鳥形山鉱業所の開設は1971年ということです。ニホンカワウソが最後に確認されたのは1979年の新荘川です。ニホンカワウソの最後の個体はコンベアを拝んだことがあるのかもしれません。
日本一長いベルトコンベアは埼玉?
野坂和彦氏の「世界最長トンネルベルトコンベヤ輸送方式を基幹とした叶山石灰石鉱山の開発」(日本鉱業会誌1987年7月)によれば、1987年の時点で鳥形山のベルトコンベアは日本一ではありませんでした。
総長(Km) | 最大機長(Km) | 能力(t/h) | 速度 | |
叶山 | 22.7 | 14.1 | 1000 | 150 |
武甲 | 23.4 | 8.8 | 1000 | 170 |
鳥形山 | 23.3 | 7.7 | 2100 | 300 |
秋芳 | 16.5 | 3.2 | 1750 | 220 |
西サハラ | 96.6 | 11.9 | 2000 | 270 |
「総長」はコンベア設備の総延長、「最大機長」は1台の長さの最大値のことだと思われます。なお、野坂論文の表では速度の単位が「m/sec」になっていますが、一般にベルトコンベアの速度は分速で示されることが多いようです。秒速300mなら音速に近くなりますので、単位は「m/min」と思われます。
分速300mでも秒速換算すれば5mです。かなり速いわけです。直線距離で22キロ、標高差1100mの傾斜がこの速度に寄与しているものと思われます。
鳥形山のコンベアは、1983年に埼玉県横瀬町の武甲鉱山(下の地図のピンク三角)と日高市の太平洋セメント埼玉工場(ピンクの丸印)を結ぶコンベアに抜かれるまでの10年以上の間、日本最長だったのかもしれません。

1984年には群馬県神流町(かんなまち)の叶山鉱山(紫の三角)が埼玉県秩父市の秩父太平洋セメント本社工場(紫の丸印)までのコンベアで操業を開始しています。このうち県境をくぐるコンベアが14.1キロで1基としては国内最長のようです。
なお、少なくとも当時の世界一と目される西サハラのブーカラーに設置されたコンベアについては、野坂論文では「スペイン領サハラ」となっていますが、今は「西サハラ」の呼称が一般的ですので上の表ではそのように改めました(西サハラは国連非加盟)。
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